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■怒らせた話6

※R15

「はあ……はあ……」
苦しそうな息が、ブラッドの私室に響く。
「そろそろ私が欲しいのではないか?ナノ」
吊り上げる鎖を揺らし、別の手で私の胸を愛撫しながら、ブラッドは冷酷に笑う。

「ご冗談……誰が、昼間から……」
両手を吊り上げられている。足がつくとはいえ、体勢は苦しい。
けれどブラッドは解放する気配もない。
「そうかな?」
「ん……っ……!」
胸を愛撫していた手が、ふいに下に伸びる。足を閉じる間もなく、指をねじこまれ、
「下は、そう言っていないようだが?」
濡れた指先が、私の口に割り込んできた。
「ん……っ……」
感じるのは高級素材の手袋の感触と……正直言って、慣れたくも覚えたくもない味。
「この……変態……っ……」
やっと口を解放され、涙目でブラッドを見上げる。
「それは君の方だと思うがね。見境もなく、男に興奮して……」
そう言って、再び私の下半身に手をのばす。
私の服は、ご存じの通り、上着の前も切り裂かれている。
けど下の服も、下着を残して下ろされていた。
抵抗なんて、足を閉じるのが精一杯だった。
「……ん……やめ……」
鎖を揺らし、拒否しようとするけれど、もちろん何も出来ない。
「本当に最低な女だ。君は。私を振り回すだけ振り回して、自分はのうのうと……」
ちょっと待って。約束を忘れたのは申し訳ないけど、私にだって言い分はあります。
「……あ……っ!」
でも手を入れられ足を開かされ、下着の上から××に指を這わされ、声が出ない。
「あ、あ……やだ…ぁ……」
もしかすると、目覚める前に何か盛られたのかもしれない。
もっと触れてほしい。快感で、足がガクガクして立っていられない。
膝が崩れ、鎖が鳴る。手首が苦しい。けれど、立てない。
「……ぁ……ああ……」
「トカゲに可愛がられ、愉しかったか?
そして奴の方がいいと言ったその身体で、私を受け入れると……」
「ブラッド……ちが……」
「何が違う!この……××が……!」
女性に対する侮辱語を吐き捨てられる。でも怒る余裕もない。
「あん……やぁ……」
指で刺激される場所は、弄ばれるたびに雫をこぼし、下着をびしょ濡れにし、高価な
じゅうたんの上に染みを作っていく。
音を立ててかき回され、腰が沈むたびに刺激が深くなる。
「私が欲しいようだな、ナノ」
「…………はい……」
ついにプライドも何もなくうなずくと、
「ダメだ。今度という今度は徹底的にしつける」
「……ん……っ!」
布の上から××を指で開かされ、雄を待つ場所にねじこまれ、その刺激だけでイク
ところだった。でもブラッドはまるで分かっているかのように、寸前で止める。
「ブラッドぉ……」
潤んだ目で見上げ、懇願する。けれど、支配者の目がより冷淡になっただけだった。
「そんな目でトカゲを誘ったのか?
快楽をエサにされ、壁の薄さも構わず、トカゲの方がいいと叫んだのか?」
あー……やっぱり聞かれてましたか。
返答はしなくても、私の表情が肯定を伝えていたらしい。
頭上の鎖をつかまれ、上に引き上げられる。ただでさえ足下が危うかった私は、より
苦しい体勢になり、うめき声を上げた。
「あの爬虫類はいつか落とし前をつける。だが、その前に君だ……。
もう人間扱いを受けられると思うな。あのボロ小屋にも二度と返さない!」
ンな、ボロ小屋って失礼な。
「いいんですか?私の紅茶の腕が欲しいんじゃ……?」
必死に言葉を紡ぐ。だけどブラッドはサディスティックに笑い、
「相変わらず、君は頭が回らない子のようだ。君が私に反抗し、自我を保ったままで
いられると、本気でそう思っているのか?トカゲに易々と誘惑される君が?」
と、ニヤリと笑い、もう下着の意味がなくなっている、私の下着を見た。
「ああ、試してみるのもいいな。エリオットや、門番たちとやってみるか?
壁につないだままにして、衆目に晒すのも悪くない」
――この、変態……!
愉しそうに笑うブラッドを、せめてもの矜持をこめ、睨みつける。
とはいえ、これからどうすればいいでしょうか。どうも八方ふさがりです。
このままブラッドを怒らせ続ければ、一つくらいは本当にやりかねない。
中途半端なまま放置され、身体の熱も多少は冷めてきた。
私は吊り上げられたままで、必死に知恵を絞る。
――それにしても、今回は怒りすぎですよね。
ドタキャンはまあ申し訳ないとして、浮気(?)自体はしょっちゅうなのになあ。
何も、ドレスを台無しにしたり、宝石を売っ払ったりしたことくらいで……。
――宝石……?
自分で考えたことに、自分で首をかしげる。
――あれ?『宝石を売っ払った』?

何でそんな言葉が頭に浮かんだんでしょう。
そして私はチラッと、床上に放置されたままの『証拠品』を見る。
『返品明細書』『完済証書』と書かれた紙。

――あ。あああああ!!

そうだ。思い出しました。今さらながら、真っ青になる。
そう、あれはグレイに抱かれた後のこと……。

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