続き→ トップへ 短編目次 長編2目次

■店を改装した話10

ベッドのスプリングがうるさく鳴っている。
上を脱いだボリスが、何も着ていない私に覆いかぶさる。
「ナノ、感じすぎだって。大げさだよ」
「だって、ボリスの猫舌が……」
ザラザラした舌に胸をなめられると、新鮮というかムズムズする感覚が起こる。
「ん……ん……」
先端を甘く噛まれ、声が漏れる。おへその辺りを軽く引っかきながらボリスは、
「ね、ナノ。どうしてほしい?」
そんなもの、いくら経験を重ねたって言えるはずもなく、おずおずと足を広げる。
「ん……っ」
チェシャ猫の手が入り込み、すでに濡れ始めた場所に侵入する。
「どう?気持ち良い?」
「……ぁ……っ」
指が上下に動かされるたびに背中が震える。
「ん……やっ!……あ……だめ……」
敏感な一点を弄られ、顔が赤くなる。
「自分から押しつけといて何言ってるのさ。ほら、こんなに濡れちゃって」
「やだ……そこばっかり弄らないで……!」
ボリスはわざと音を立てて意地悪をしてくる。
「ほら、聞こえる?ナノのいやらしい音。そんなに感じてくれてるんだ」
そしてボリスは指をそっと奥にずらし、ゆっくりと潜り込ませる。
内部を強く刺激され、私はのけぞった。
「はあ、はあ……あ、やん……っ」
気持ち良すぎて身体がけいれんする。尻尾がするりと前を刺激し、もうダメだった。
「ボリス……お願いです…中に……がまんできない……」
涙を流して哀願すると、ボリスは笑う。
「降参が早すぎるぜナノ。仕方ないなあ」
そうは言っても、前を緩めて取り出したボリスのモノも、十分にいきり立っていた。
秘所に押し当てられ、期待に唾液を飲み込む。
「ナノ、行くよ」
「はい、ボリス……んん……っや……」
一気に最奥まで突き入れられ、視界が真っ白になる。
「動くよ、ナノ……!」
必死にボリスにしがみつき、動きに耐える。
「はは。ナノの中、本当に気持ち良い……」
「私もです……ボリス…っ」
演技でもご機嫌を取るためでもなく、本当にイってしまいそうだった。
「ナノ……すごい……」
乱暴に動かれ、何度も何度も突き上げられる。
「ボリス……だめ……やだぁ……」
それでも無意識に内側は彼を締めつけ、結合した箇所からは愛液が流れ続ける。
「ナノ、ナノ……ナノ……!」
奥に押し込まれるたびに身体が激しく揺れ、さらに強く彼を抱きしめる。
「はあ……はぁ……ボリス……!」
「ナノ……」
何度となく舌を絡め、もう何も分からないほど強く彼を感じた。
どれくらい律動が続いただろうか。
もう私たちは二人して汗だくだった。
潤んだ目で私は訴える。
「ボリス……私、もう、ダメ……」
「俺も、イきそう……ナノ……そろそろ……」
うなずいて彼を促した。
ボリスが私の腰を抱え直し、さらに動きが激しくなり、限界まで入れられる。
「はあ、はあ、あ……」
「……や、だめ……ぁ……あああっ!あ……!!」
瞬間、声を上げて、達した。
一瞬遅れボリスも中に放つ。
「はあ……はあ……」
脱力してシーツに沈むと、ボリスもゆっくりと出した。
薄い茂みに白いものが零れ、何となく恥ずかしくなる。
「ボリス……」
彼を見上げ、キスをねだる。
チェシャ猫は笑って、もちろん応えてくれた。

…………
何時間帯か経過した。
でも出発するにしても、いくらかの持ち物は持って行きたい。
それで、ボリスに護衛も頼むことにして、最初に店に戻ることになった。
「それじゃあ、先に店からつなげるよ」
「お願いします」
ボリスが扉を開けてくれた。
私は目をつぶって敷居をまたぐ。

そして目を開けると、あちこち荒らされ、何もない私の店が……。
「……へ?」
思わず首をかしげる。
何だかきれいになっていた。
単にホコリ一つないという意味のきれいではなく、あちこち作り換えられている。
「え?え?」
キョロキョロとあたりを見る。
まず、歩けばギシギシ鳴ったプレハブではない。
レンガだか鉄筋だかは分からないけど、とにかく『普通の家』になっていた。
食料庫も商品の在庫棚にもぎっしりと物がつまっているのが見える。
カウンターの上には、苦労して入荷したあの紅茶があった。
でも中古の一人用寝台が、頑丈そうなダブルベッドになっているのは余計だと思う。
そしてふりむくと、テーブルがある。そこには、
「やあ」
「チェシャ猫を上手く手懐けたようだな」
「おかえり、ナノ」
「…………」
エース、ブラッド、グレイ、それにエリオット。
そこには知り合いがそろっていた。
何か言いたそうなグレイが椅子から立ち上がるけれど、結局無言で座る。
エースは笑いながら手を振り、ブラッドは不機嫌そうに私を横目で見、黙って、
ステッキで合図をする。
すると控えていたエリオットが、やはり無言で私の側に来た。
何をする気かと思っていると、彼はトランクを開けた。
「――っ!」
そこには盗られた額の十倍、いや数十倍はありそうな金が積まれていた。
何があったのか分からないけれど、三人は何らかの合意に達したらしい。
「何?お店を直して、お金も返せばナノの機嫌が戻ると思ったの?」
毛を逆立て、今にも銃を抜きそうなボリスを何とか私は押さえる。
私が時計塔に行くと決めたことは、多分バレている。
「……断ったら?」
私は首をかしげて聞く。
「……次に会うとき、君の店はもう無いだろう」
目をそらしながらグレイは言う。
「マフィアには中立地帯だろうと関係ない。全力を挙げて時計塔を攻撃する」
ブラッドは足を組み、静かに言う。エリオットは無表情で背後に控えている。
「俺だけは応援したいんだけど……やっぱり寂しくて斬っちゃいそうだな。
あいつだけ君と楽しくやってるなんて、それってズルいし仲間外れだろう?」
エースは椅子の背にもたれながら、剣の柄を叩く。
私は呆然と立ち尽くした。

10/12
続き→
トップへ 短編目次 長編2目次


- ナノ -