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■猫と手錠と鎖6

※R18

「ああ、あ、や、あ……っ」
揺さぶられるたびに、声が出てしまう。
ボリスは何度も何度も貫きながら、唇に触れ、空いた手で抱きしめ、鎖をちょっと
だけ乱暴に引っ張る。
「ナノ。もう、離さない、ずっと、俺だけの……」
私は気持ち良すぎて涙を流しながら、何度もうなずく。
「うん、ボリスだけの物になる……もう、どこにも行かない……」
愛液が勝手にあふれ、互いの手錠がぶつかり、鎖が胸元で揺れて月明かりに光る。
誰よりもきれいなチェシャ猫は、私の腰を抱え、強く打ちつける。
「ああ、や……あ、もう、ダメ……ボリス、イッちゃう……!」
「いいよ、ナノ…その顔、たまらない……俺だって、もう……」
そしてどうしようもなくなるくらいに打ちつけられ、声を上げさせられ、ベッドから
落ちそうになるくらいに乱れて。
「ナノ、ナノ……っ!!」
そして最奥を強く強く貫かれ、その瞬間に頭の中が真っ白になる。

「ボリス……――――!!」
初めて迎える絶頂を抑えきれず、大きな声を上げ達した。
そして自分の奥にも、大好きな恋人の熱を感じた。

「あ、ああ……ナノ……」
ボリスはなお何度か揺さぶり、残滓を出し切ると、静かに動きを止める。
暗闇の中に、息を整える二人の呼吸音だけが響いた。
そして二人、見つめ合う。
「ナノ、愛してる」
「うん……私も愛してる」
首輪の鎖を、イタズラみたいに軽く引っ張られる。
私はつながったまま、笑って起き上がり、そのままボリスの身体を抱きしめる。
「すごく良かった……大好き……」
「俺も。最高だったよ、ナノ」
手錠をした方の手は、痛いほどに強く私の手を握る。
そして私たちは、ずっと抱きしめ合ってキスをしていた。

…………

…………

「はあ、結局バイトを止めちゃったし……」
私はボリスの部屋でガックリと肩を落とす。
対するチェシャ猫は上機嫌だ。ベッドの上でゴロゴロと私に身体をすり寄せる。
「いいじゃない。俺は嬉しいよ。ナノがずーっと俺といてくれるんだから」
「シフトってものがあるの。バックレは最低なんだよ?」
役持ちが背後にいるせいとはいえ、連絡したときはお咎めなしどころか、受け取って
ない給与まで送ってくれた。申し訳なさすぎて泣きたい。
「そのうちちゃんと謝りに行かないと……」
あと新しいバイトも探したい。言葉に出来ないけれども。
「ふうん。その格好で外に出ようと思うんだ」
チェシャ猫のニヤニヤ笑い。
「…………」
見下ろす自分は下着姿。
そしてガチャリと嫌な音がなる。
そう……鎖と手錠。
ボリスの部屋に住むようになって、それなりに時間帯が経つけど、今もそのまんま。
何か最近はちょっと慣れてきた。
本当に料理時間とか早くなってきて、染まりそうな自分が怖い。
ただ……衣服の着脱が未だに大問題。ボリスはどうしても手錠を外したがらないし。
結局、肩を露出させたセクシー系ドレスを着たり、下着だけで過ごしたり。
……ボリスが大喜びなのが複雑で仕方ない。

仕事も辞め、外に出るわけにも行かず、食べて寝て、ベッドで仲良くするだけの
ただれきった生活。でもボリスは幸せそう。
認めたくないけど……私も幸せ。
「はあ」
あきらめて横になると、ゴロゴロとのどを鳴らし、チェシャ猫が抱きついてきた。
あー、手が変な動きを……もう。さっきの時間帯も仲良くしたっていうのに……。
「で、本当にコレ、いつ外してくれるの?ボリス」
手錠と鎖を鳴らす。
ふざけた返答が戻るかと思いきや、チェシャ猫は真面目な顔だった。
「あんたが落ちつくまでだよ。寂しくて、フラフラして、どこかに行かないよう、
俺がずっと見張ってる」
「……フラフラしてない。ずっとそばにいるから」
「ダメ!チェシャ猫を不安にさせた責任は取ってよね」
どういう責任。ため息をつきながらも、相手は可愛くてカッコイイ、大好きな猫。
ついつい甘やかしてしまう。
「ボリスがそうしたいのなら……」
頭を撫でるとチェシャ猫の耳がピンと立つ。
のどを鳴らし、ゴロゴロといっそう身体をすり寄せつつも、手が下着の中へ……。
「ん……」
出したくもない甘い声を出しながら、ベッドの上で絡み合う。
やがて触れ方は互いに大胆になり、昼間からただれた声が部屋に響いた。

心にポッカリ空いた穴も、今はボリスで満たされている。
遊園地のことを思い出して落ち込むこともほとんど無くなった。
そのうち手錠と鎖を外してくれるんだろうか。
でも、私の不安定さは筋金入りだ。
もしかしたら、ずっと彼の部屋に閉じ込められ、飼われるのかもしれない。
でもそうされても、受け入れてしまいそうなほど、私はボリスが好きになっている。
「ボリス、大好き……」
手を伸ばすと、すぐに応えてくれる優しい恋人。
そして二人でキスをする。

私を閉じ込め、縛るチェシャ猫と、いつまでも抱きしめ合っていた。

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