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■恐ろしい勘違いをした話4

※R18

時間帯が変わり、外は夜空に転じた。
時計塔の作業場では、暗闇の中に声が響く。
「ユリウス、ユリウス……もっと……」
ユリウスを抱きしめ、何度もねだる。
「おまえ、エースに何かされたのでは……く……っ」
破瓜の痛みも少しずつ引き、それよりも恋しい人が欲しくて仕方ない。
赤の匂いから分かったのだろう。
私が経験していなかったと知り、ユリウスは混乱しているようだった。
でも男の欲望に突き動かされたのか、やがて私を責め立てる方に集中する。
「ナノ、ナノ……」
ソファの上で私の腰を抑え、何度も何度も攻め入り、そのたびに私は声を上げる。
「熱くて、あなたがいっぱいで……気持ちいい……」
「私もだ。おまえの中は……とても……」
そして互いに汗ばんだ身体を絡め、深いキスをする。
その間も猛った塊が何度も奥深くに押し入り、そのたびに嬌声が上がる。
やがてユリウスはそれをいっそう速めた。
「ユリウス。私、もう……」
「ナノ……おまえが好きだ。愛してる……!」
私は自分からユリウスを抱きしめ、キスをする。
「私も、私も、ユリウスが、好き……!」
瞬間、ひときわ強く突き上げられ、頭の中が真っ白になった。
「あ……や、ああああっ」
「ナノ……っ!」
そしてユリウスも達した。私の中でわずかに痙攣(けいれん)し、静かになった。
のしかかる重さを心地良く思いながら、私も至福の中で意識が遠くなっていく。
「愛している……」
彼が本当に愛おしそうに私を抱きしめ、キスをしてくれるのを感じながら。

…………

その後、二人で改めて話し合い、私の大変な勘違いが判明した。

「おまえ……どういう誤解をしていたんだ!
こいつと私が……よりによってこいつと私が……っ!!」
それ以上は言葉にならないのか、嫌悪に顔を歪め、ただブルブルとエースを見る。
「ははははっ!俺がベタベタすればするほどナノは勘違いするし、ユリウスは
ナノが俺に怯えてるみたいだって勘違いするし!見ていて楽しかったぜ!」
エースは床に転がり、腹を抱えて馬鹿笑い。
私はというと、エースに爆笑され、ユリウスに激怒され、しょんぼりしている。
……ベッドの中で。
「だけど、そのせいで二人が結ばれたんだろ?俺は二人のキューピッドってわけだ」
「事態をややこしく引っかき回しただけだろう!
とっとと出て行け!当分、顔を見せるな!」
激昂したユリウスが扉をさすと、エースは肩をすくめ。
「はいはい。じゃあ、ナノを見習って、お邪魔虫の俺は退散するか」
珍しく素直に従い、私たちに背を向ける。
そして扉を開けながらベッドを見、私に片目をつぶった。
「そのネグリジェ、似合ってるぜ」
「……っ!」
ソファで×××だったため、服がアレになっちゃって……替えの服はちょうど洗濯を
していたため、仕方なくネグリジェ。
もちろん人に応対出来る格好ではないので、ベッドの中にいた。
けど、事情はバレバレなんだろうな。顔から火が出る思いだ。
ユリウスはカツカツと靴音を立て、エースを扉の外に押し出す。
そしてバタンと乱暴に扉を閉め、鍵をかけた。
『あはは!幸せにな!二人とも!』
扉の向こうから嬉しそうな笑い声がし、足音が遠ざかっていく。

そしてユリウスはギシギシと音を鳴らし、ハシゴを登ってきた。
ベッドの私をのぞきこむけど、出て来た言葉は、私への怒りではない。
「おい、身体は大丈夫か?」
「う、うん。もう起きられると思う」
横になっていたのはネグリジェだけが原因じゃない。
初めてだったので、ちょっと体調をくずしたのだ。
そしてユリウスはギシッと音を立て、私の隣に横になる。
「すまないな。初めてだと知っていたら、もっと別の場所で丁寧に……」
「ううん。あれでいい」
というか元は互いの勘違いが原因だ。
「だから、これからは、もっと……」
「ああ。二人でたくさん話そうな。また勝手に、妙な誤解をし合わないように」
顔を合わせ、二人でクスクス笑い、どちらともなく唇を重ねる。
そして抱きしめあった。
ユリウスは私のネグリジェの肩紐を下ろし、肌に口づける。

「どこにも行くな。出て行きたくとも、私が出してやらないからな」

「うん。もうユリウスのそばを離れない」
微笑むと、ユリウスもぎこちなく微笑んでくれた。
夢じゃない。ずっと……ユリウスとこれからもいられるんだ。

どこかで、小瓶のようなものが砕けた気がした。

でも私はもう気にしない、気にならない。
ユリウス。彼が世界の誰よりも愛おしい。

「ずっと、一緒にいる……」
幸福な思いにかられながら、彼にキスをした。

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