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■店を改装した話6

ピアスはすぐに私の様子が尋常ではないと気づいた。
「ナノ!どうしたの!?誰にひどいことされたの!?」
今にもノコギリを取り出しかねない様子だった。
「大丈夫ですよ、ピアス……」
返事をする。でも何だか声が弱くなっている。叫びすぎたせいかな。
「ナノ……かわいそう……俺みたいに頭が悪くて、俺より力が無くて……」
何か言いましたか貴様。
「そうだ!ちゅうしてあげるね!」
意味不明のことを言うなり唇を重ねてきた。
「ん……」
……本当に重ねるだけ。でもそんな子どものようなキスには逆に安心感があった。
だから顔を離したピアスに頼む。
「ねえピアス。ちょっと服を着るのを手伝ってもらえます?私、今疲れていて」
「分かった!俺、手伝うよ!……」
満面の笑みで服を取り……そこで動きを止め、私の身体をじっと見る。
私が何も着ていないことに初めて気づいたようだ。
一糸まとわず、あちこちに白濁したものが飛び、汗と体液にまみれ、ひどい状態に
なっている私を、じっと見ている。
「……ナノ、触っても、いい?」
「嫌です。誰にも触られたくないです」
いちおう言ってみたけれど、ピアスの手はすでに私の胸に伸びている。
大きな手で不思議そうに私の胸を包み、おずおずと、といった様子で強弱をつけて
触れる。反応するほどでもないけれど嫌だと抵抗することも出来ない。
そのうちにピアスは少しずつ大胆になり、身体のいろんな箇所に触れ始めた。
「ピアス……本当に、ダメ……」
「ナノ……可愛い……」
眠りネズミの息はどんどん荒くなっていく。
こちらが抵抗しないのを良いことに手が下へ下へと下がり……
「ん……ピア…ス……!」
まだ白濁したものが残る茂みの奥へ指を潜り込ませる。
そして冷え切ったものをぐちゅぐちゅとかき混ぜ、さらに息を荒くした。
「ナノ……い、いい?」
「…………」
返事をしても無駄なら、応える義理もない。
実際にピアスは私の返事を待たず、震える手でズボンのベルトを緩めはじめた。
一風変わった服でも、出てくる……は他の人と同じに硬くなっている。
「こ……ここ、ここだよね?い、入れて、いい?」
こちらが何も出来ない状態なのに、おどおど聞いてくる。
「……ええ。でも一度きりにしてくださいね」
「う、うん!一回だけ!俺、頑張るから!」
元気に微笑んで、私の腰を抱え、押し当てた。
私は目を閉じ、あの塔の幻を見ようとした。
――終わったらハートの城に行きますか。そこでのんびり休んで……。
一度だけなら、ダメージにもならないと自分に繰り返し聞かせながら。

…………
ピアスの家はガラクタだらけだ。
「はあ、はあ……ナノ……大好き……」
「…………」
ベッドでピアスに揺さぶられ、私は天井を眺める。
――次の食事はチーズ以外のものがいいんですが……。
あの匂いは食欲が失せる。
連れてこられてから長いけど、数えるくらいしか食べ物を口にしていない。
ピアスという子はまともな子だとずっと思っていたけど違うらしい。
全身を特定の色に染めて帰ってくることがしばしばだし、出て行くときは私を、
ベッドに縛り付けていく。たまにひどい要求をし、通らなければノコギリで脅す。
でもまあ、私並みにだまされてくれる子だし、上手く丸め込めば出て行けるのでは
ないかとも思う。
ただ、最近はなぜか何もする気が起きない。別に暴力をふるわれてるわけではないのにコレだ。
本当に自分は意志薄弱だと嫌になる。
「ナノ、ナノ、ナノ……」
小さく声を上げてピアスが達する。内にどろりとしたものが流れた。
私は気をそらすためにピアスの耳に集中する。
大きく息を吐くネズミさんはちょっと可愛い。
――外見に癒やしがあるのは重要ですよね。
これが騎士だったら憎たらしくて、見てもいられない。
今や、かなり重くなった腕を持ち上げ、ピアスの耳を触ると嬉しそうにして、キスを
してくれる。そして何度もキスをしながら、また私の胸を弄りだした。
「ねえ、ナノ。またいい?」
「私、すごく疲れてるんです。あとお腹もちょっと空いて……」
「ダメなの?ちゅう……」
尻尾を垂らす。そのまま出て行ってくれそうだ。
「でも、俺、ナノが好きだよ?」
「私もピアスが好きですよ」
そう言わないと何をされるか分からない。
このネズミさんとの短い生活の中で嫌でも思い知らされたことだ。
「なら、もう一回いいよね」
「……もう一回だけですよ」
そう言うと、ピアスはまた嬉しそうに腰を動かし始めた。
もちろん一回だけでは終わらないとあきらめている。
――顔は可愛いんですけどねえ……。
床に放られた、とある色の液体のついたノコギリをチラッと見る。
帰ってすぐ押し倒してきたから、服にまだその色がついたままだし、というか、
いい加減に脱いで欲しい。その液体だけじゃない、別の色んな嫌な匂いも混じって
いるのがちょっと嫌。ピアスが傷つくからとても言えないけど。
「ナノ、ナノももっと腰、動かしてよ」
「はいはい」
億劫な身体を叱咤し、ピアスの動きに合わせ、腰を振る。
もうずいぶん前から何も感じず、行為には苦痛しかない。
「はあ、はあ……すごく気持ち良い。大好き……」
「私もですよ、ピアス」
こう言わないと何をされるか分からない。
――あの塔があったらいいのに……。
そして目を閉じる。
目が覚めたらロフトベッドの上だ。家主はいつまで寝てるんだ、馬鹿、と私を叱る。
私は謝りながらベッドを下り、珈琲を入れてあげる。
その後は、出来ない家事を苦労してやり、また怒られて。
珈琲の研究をして、一休みに家主に珈琲を淹れてあげて。
二人で飲んでしばらく話し、私は塔の中をぶらぶらする。
歯車の音を聞きながら物思いにふけり、屋上から不思議の国を見下ろし空想に浸る。
ごろんと横になり、のんびり雲を眺めているうちにお昼寝。
目が覚めるとなぜか高い確率でコートがかけられ……。
「ナノ……ナノ、ああ……」
ピアスに揺さぶられ、我に返る。
ここは眠りネズミさんのおうち。暗い森の奥だ。
何で私はここにいるんだろう。
「はあ……はあ、ナノ、もう……イく……」
「ピアス……ん…来て……」
腰を動かしながら、何とか快感を引き出そうとした。
そのとき、声がした。

「馬鹿ネズミ、おまえ、生きてるか?」

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