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■妖怪『一目懐き』の煩悶

※R12

ビバルディが笑う。
「何じゃ、ナノ。時計屋に惚れておるのなら、わらわが手助けして……」
「結構です。恋でも何でもないですし」
キッパリ。『時計屋』という単語が耳に入ったのか、エリオットがギロリとこちらを
見た気がしたけど、ビバルディもエースも平然と無視をする。
「そうなんですよ、陛下。この子、ユリウスに一目で懐いちゃったみたいで。
『一目惚れ』は知ってるけど『一目懐き』とかあるんですかね。あははは」
エースは楽しそうに笑う。
一目懐きって……何か妖怪の名前っぽいなあ。
「何?本当に三月ウサギの女が時計屋に?……ほほほっ!これは愉快じゃ!!」
「本当ですよね、あはははは!」
――あ、あんたら……。
高らかに笑う女王と騎士に、こぶしをワナワナ震わせる。
近くでは相変わらずウサギ二匹の死闘。ああもう、バンバンとうるさいですねえ。


「その、だから恋とかじゃないんです。他の役持ちの方々と同じに、普通に友達と
して、お話したり、ときどき会ったりしたいなと……」
まごまごと言い訳してみる。するとエースは腕組みし、うんうんとうなずきながら、
「俺は君の恋を応援したいけど、ユリウスから、君の扱いについて相談も受けてるし
どっちにもつけない感じかな。ごめんね。あははは!」
『相談』って、やっぱり迷惑がられてるんだ。内心、傷つく。
「薄情よの。わらわは全面的に支援するぞ。三月ウサギの女と葬儀屋の道ならぬ恋!
良いではないか、良いではないか!」
キャッキャと一人ではしゃぐ女王陛下。
だから、ユリウスとはそういうのじゃないと何回言えば分かってもらえるんだか。

「私、もう行きますね」
この人らと話してもダメだと、紅茶セットを片づける。
持参したナノブレンドの茶葉などを包んでいると、ビバルディが笑いをやっと
おさめ、私に言った。
「おまえのしたいようにおし。だが、以前いた世界とこちらを比べ、失望するのは
利口とは言えないよ。振り返るのではなく、戦うことだ」
見透かされたような気がして私はドキッとする。顔を上げると騎士の底知れぬ瞳。
「君がユリウスと堂々と会いに来られるよう祈ってるぜ。
あいつ、友達が少ないからさ。友達になりたがる良い子は大歓迎だ」
「どうも……」
私はあいまいに頭を下げ、ウサギたちを振り向く。
どうやらエリオットとペーターも終わったようだ。
ペーターは駆け寄ってくるなり、私につかみかからんばかりに叫ぶ。
「助力が必要とあらば、不本意すぎではありますが僕が手伝ってやらないでもない!
おまえみたいな馬鹿で愚かでろくでなしの女は、せいぜい幸せにやっていなさい!
その器量よしとは言いがたい顔が不幸で歪めば、その男に何をするか分かりません!」
どこか泣きそうだったけど、その顔はどこまでも生真面目だ。
「……えー、ええと、ありがとうございます、ペーター」
とりあえず、白ウサギさんは、永遠に自分の恋心を自覚しないでいてほしい。
それと私と縁がないこの世界でも、仲良くしてくれるのが嬉しい。
この城の役持ちで、真剣に私を心配してくれるのって、ペーターだけだし。
「本当にありがとう、あなたとお友達になれて良かったです、ペーター」
彼の両手を取った。そして息をつまらせる彼に、
「ぜひ、また会いに行かせて下さいね。あなたに最高の紅茶をごちそうします」
そして今期一番の笑顔で微笑む。すると、ペーターの白磁の顔に赤みが……みるみる
頭のてっぺん、ウサギ耳の先まで上り、
「――っ!!」
「ホワイト卿!」
……卒倒し倒れた。あんた、乙女ですか。
呆れていると、後ろから手を取られた。
「用件は終わったな。行くぞ、ナノ」
「あ、ちょっと、エリオット!」
そして銃をホルダーにおさめたエリオットは、強引に私を引っ張っていく。
どこからか春の桜の花が舞い散った。

最後に振り向いたとき、ビバルディは優雅に紅茶を飲んで、ヒラヒラと手を振り、
エースは『頑張れよ』とニコニコ笑いかけ、ペーターは……えーとメイドさんたちに
介抱されておりました。シュールだなあ。

…………

そして、ハートの領土から、かなり離れた森の奥。

「エリオット……ダメですよ、今は昼だし、誰が見てるか……」
「うるせえ!我慢できねえんだ、いいだろ?」
抵抗するけど、エリオットは私を木の幹に押しつけ、身体をまさぐってくる。
首筋に何度も口づけ、見える場所にわざと傷をつける。
「ナノ……っ」
服を首筋までたくし上げ、大きな手で、痛さを感じるくらいに強く愛撫してきた。
別の手はすでに下着の中に入り込み、反応の始まらない場所を荒く探る。
「ん……ふ……」
両手がふさがってるワケでもないのに、相手の力が強すぎて抵抗が出来ない。
そして深いところに指をねじこまれ、声が上がる。
「え、エリオット……痛……!もう少し、優しく……」
「いいのか?優しくして、興奮してきてるだろ?」
……うん、まあちょっとは湿ってきてるかも。でも……。
「ん……っ!」
下の服を性急に脱がされ、真昼の木漏れ日の中に下半身が晒される。
上だって外気に晒され、羞恥心で真っ赤になった。
森の奥とはいえ、本当にいつ誰が来るか分からないのに……。
「エリオット……やめ……」
「時計屋には渡さねえ!!おまえは俺だけの女だっ!!」
怒声が響く。声を枯らして違うと叫んでもきっと通じないだろう。
「はあ……はあ……」
前戯もそこそこに、草むらに引き倒され、足を抱えられた。
「エリオット……あなたが、好きです。私は、あなただけの……」
でも十分に硬くなった××を私にあてがい、三月ウサギは酷薄に微笑む。
「信じられるかよ」

そして、一気に最奥まで貫かれ、私は快感と悲しみに叫んだ。

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