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■エイプリル・シーズンの到来・上

※R18

そして、エリオットのそばにいると決めて。時は平和に流れる。

帽子屋屋敷の庭園は、よく晴れた昼間だった。
私は三月ウサギの背中によじのぼって空を見上げる。
「うーん……天気がいいですねえ」
「おう!最高のピクニック日和だぜ!」
「…………」
私は、私を肩車する三月ウサギを冷酷な目で見下ろす。
「ピクニックのお弁当は?」
「……あー、どこに行ったかな……」
私はそーっと三月ウサギの耳に触れる。
すると私の足を支えるエリオットがビクッとして、
「い、いや、その!そうだ!厨房に行こうぜ!
シェフが最高のニンジンランチセットをだな……!」
「ええ、そうですね……」
耳をつかむ手に力を入れながら、かなり先に見える帽子屋屋敷を見る。
「い、いたたたたっ!ナノ、ちょっと、手加減を……」
「エリオット!大丈夫ですか?」
エリオットが心底から心配で、手にぎゅうぎゅうと力を入れ、耳をつかむ。
「悪かった!ずっと仕事が続いて腹が減ってて、気づかずおまえの分まで……。
わ、悪かった!悪かったから!耳は止めてくれ!」
「わっ!エリオット、ちょ、暴れないで下さいよ!」
肩車したまま大きく動かれて、必死で耳にしがみつく。
「そう思うなら離せよ、い、いってえっ!!」
「わ!お、落ちる、落ちます!!いやぁぁー!!」
庭園に、二人の悲鳴が響いたのであった……。

…………

正座し、ずずーっとお茶を飲む。そして、向かいから声がかかる。
「……ナノ。テーブルに座るのは君の世界の正しいマナーだったのかね?」
「――はっ!」
我らがボスに指摘され、私は正気に戻る。そうだった。ここはボスの部屋だ。
エリオットの仕事の件の報告で、一緒に来させられたんだった。
「失礼いたしました!」
と、持参したる座布団をテーブルに置き、その上に正座を……
「違うだろう……」
エリオットに襟首つままれ、テーブルから下ろされる。
「あう」
仕方なく、ソファに座布団を置き、その上にごそごそとよじ登る。
すると、すぐエリオットに抱き寄せられた。ああ、お茶に手が届かない……。
「で、おまえたちは上手くやってるのか?」
「おう!当たり前だろ!なあ?ナノ!」
「え……ま、まあ。そうですね」
力いっぱい向けられた笑顔に爽やかに笑う……若干、冷や汗をかきながら。
そんな温度差満ちあふれる私たちを、じっと見ながら我らがボスは、
「まあいいだろう。大人しくさせているのなら、それで構わない。
せいぜい仲むつまじくやるといい。出来ることは協力しよう」
と、私の淹れた紅茶を優雅な仕草で飲んだ。

…………

エリオットは街を、大股で上機嫌に歩く。
私はズルズルと半ば引きずられ、エリオットの見回りにつきあう。
「ナノ!ナノ!ニンジン料理を食いに行こうぜ!
すっげえ美味いレストラン!おまえと一緒に行こうと思ってたんだ!」
「……見回りじゃないんですか?」
「細かいこと言うなよ。な、ホテルも取ってあるんだ!」
「……道のど真ん中で大声で言わないで下さいよ」
顔を赤くしてうつむくと、エリオットに上から頭を撫でられる。
「はは。可愛いな、おまえは。さ、行こうぜ」
「はい……」
また手を引っ張られ、私はキョロキョロと街の中を見る。
こちらを険しい目で見る街の人たち。知り合いの顔はない。
――最近、遊びに行けないから、あいさつくらいしたかったんですが……。
ため息をつき、エリオットの歩調に合わせ、歩いて行く。

…………

暗闇の中、ギシギシとベッドのスプリングが鳴る。
暗闇といっても正確な暗闇ではない。
カーテンを閉め切ってるだけで、窓の外はまだ昼の時間帯だ。
ウサギめ……食事の後『しばらく休憩できないから』とホテルに直行しやがった。

「ん……ぁ……やあ……!」
「ナノ……おまえの中、すげぇ熱い……もっと動けよ」
命じられ、快感を求める本能のまま、エリオットの腹に手をつき、腰を動かす。
下から私の腰を支え、胸を愛撫する手は暖かい。
「ん……はい……あ……ああ……」
髪を振り乱し、汗を流し、欲しいままに動き、奥へ奥へと締めつける。
「んっあん……ああ、ああ……」
「全く、××××な女だよな。自分からこんなに……」
「い、言わないで……意地悪……っ」
乱れる様を見られるのが恥ずかしくて、目を閉じる。
視界が完全に失せた感覚だけの世界で快感に集中した。
「くそっ……この……××××……」
褒め言葉か罵声か分からないようなことを言い、エリオットが私の腰をつかんで
揺さぶり出す。身体の重さの助けを借りて深さがより増し、薄汚れた部屋にひときわ
大きな声が上がる。愛液が後から後からあふれては身体を穢し、抽送はさらに激しくなる。

「あ、ああ、ああ……や……ああっ!!」
そして声を上げて達し、わずかに遅れ、自分の内にも心地良い熱を感じる。
「ナノ……」
「ん……」
エリオットが少し身体を起こし、キスしてくれる。
私はまだ離れるのが嫌で、エリオットの上でボーッとしていた。
下から私の髪を撫でる優しい手。あ、耳くすぐるの止めてー。くすくす笑っていると、
「ん?エリオット……?」
あれ。内に収まった×××が、またちょっと反応を……。
「あ、ああ、悪い……でも次の時間帯までは休憩時間だし、もう一回いいよな?」
「いいよなって、次の時間帯じゃ、なおさらすぐシャワーを浴びて着替えないと!」
「心配すんなって。俺はそのくらい大丈夫だ」
「あの……私は大丈夫じゃないんですが……というか仲直りしたんだし、いい加減、
仕事に連れ回すの止めて下さいよ。お互いに危ないんですし」
そう言うと、私の胸を弄りながら……うう……エリオットは考える表情になり、
「んー、そうだな。なら終わったら、おまえを屋敷に送らせる。それでいいな」
「ええ。まあいいですが……て、ちょっと、だから……」
「それで解決だ。よし、じゃあ楽しもうぜ」
「楽しもうって、ちょっと……」
制止しようとしたけど、腰をつかまれ、無理やり動かされて、もう、好きにされる
しかない。そうしているうちに、抗議の声も少しずつ嬌声に変わっていく。
窓の外は、やはり罪悪感を覚える真っ昼間。

そんなウサギさんと私の日常でしたが……。

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