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■三月ウサギのペット1

※R12くらい

ナノさんが話す、これまでのあらすじ。はい、拍手、拍手。

……さて、とある不思議の国に、余所者の女の子が来ました。
ダメダメすぎて元の世界から捨てられ、帰る場所のない女の子でした。
彼女は、自分を拾ってくれた不思議の国で、静かに生きることを望んでいました。

……が、余所者というのは愛される存在です。
彼女は次第に、この世界の権力者たちの関心を引くようになってしまいました。

が、いくらモテようが『余所者は愛される』という法則ゆえのことだから、さして
嬉しいとも思わず。しかも銃弾飛び交う世界の愛し方は迷惑そのもの。
彼女は逃げて隠れて逃げて隠れて、何とか一人で自立しようと思ってました。

けども、彼女を最初に拾った三月ウサギが『ナノは自分の女だ』と主張。
最終的に、ほとんど力ずくで、周囲にそれを認めさせてしまいました。
そしてナノはマフィアの2の手元に戻されてしまいました。

女の子もあきらめつつ現状を受け入れました。
マフィアは少しだけ……いえ、すごくとんでもなくムチャクチャ苦手だけど、困った
ときに拾ってもらった恩もあるし、何よりも、三月ウサギのことが怖いから怖いから
怖いから怖いから……コホン、嫌いではないから、彼女も最終的に了承しました。
はい、相思相愛、相思相愛。

彼女は『三月ウサギ』エリオット=マーチ及び『帽子屋』ブラッド=デュプレに
絶対服従を誓った、というか誓わせられました。
そして三月ウサギに愛され、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

……と終わってもいいのだけど。

…………

それは帽子屋屋敷の廊下を歩いているとき、ふと耳に入った。
聞こえるか聞こえないかの小さな声だった。

「なあ。あそこの、エリオット様の後ろに引っついてる小娘は、誰だ?」
「ウワサのペットだ。下手に近づいたら、エリオット様に撃たれるぞ」

彼らは多分、屋敷に出入りする外部の関係者さんなんだろう。
でも、その言葉には私の足が止まる。

「…………」
「ナノ?」
前を歩いていた大きな影が振り返る。
「どうした?」
大きなウサギのお耳。鮮やかな髪、笑顔。機嫌の良さそうな、この上ない笑顔。
「いえ……」
関係者さんたちは、エリオットの空気を察してか、慌てて足早に遠ざかる。
そんな彼らをエリオットはチラリと見て、
「ムカつくことでも言われたか?撃つか?」
なぜか楽しそうに言う。あ、関係者さんたちの足がダッシュになった。
私はもちろん首を横に振り、微笑む。
「いえ別に。行きましょう」
「そっか。じゃ、行こうぜ」
エリオットは少し残念そうに銃をしまい、スタスタと歩き出す。
……待て。いつ銃を出した。そして返答が遅かったら撃ってました?
しかしツッコミを口にすることなく、私はエリオットについていった。


私は『三月ウサギのペット』と言われているらしい。

三月ウサギの『女』『情婦』『愛人』……どれでもなく、『ペット』。
エリオットが起こした騒動の、元凶たる私への悪意もあるんだろう。
でも、実際の生活では、私はエリオットに大事にされ、そんな倒錯的な関係では
ないはずだ。うん。ない、はず……。

――あれ?私、最近どんな生活を送ってましたっけ?

そして私はエリオットの背を追いかけながら、ここ最近の自分を思い出してみた。
確か、目が覚めたとき……。

…………

…………

目を開けると、エリオットの部屋の薄闇の中だった。
窓の外からは鳥の声が聞こえ、風が少し冷たい。
ふと、この世界にはない『夜明け』という時刻を感じて懐かしくなる。
――まあ、カーテンを閉めているからですが。
昼の時間帯なんだろう。私はカーテンを開けるべく、ベッドから起き上が――
「どこに行くんだ、ナノ……」
「っ!」
腰に誰かの腕が回り、驚く。
「え、エリオット?」
ベッドに座ったまま振り返ると、上半身裸な三月ウサギが私を見上げていた。
精悍な身体にはまだ消えていない銃創や、何かの傷がいくつもある。
「カーテンを開けるなんて、後にしろよ……」
そう言ってエリオットも起き上がり、二人で並んで座るような感じになると、改めて
私を抱きしめる。そして私の首を自分の方に向けさせ、キス。
……首、痛い。痛い痛い。腕枕でしたものね。腕を鍛えてらっしゃるから、あれは
余計に痛かったと申しますか。いえ、言い方が良くないですね。
仮にもエリオットの女なのに。情緒なくてごめんなさい。本当、ごめんなさい。
「何を考えていた?ナノ」
エリオットが顔を離し、優しい目で私を見る。私も笑顔で
「首のコリと罪悪感の相関関係について、思いをはせておりました」
「…………」
エリオットは真剣な顔で私の額に大きな手をあて、すぐに手を離し、ため息。
「すまねえな。俺が××××と××××××をやらせすぎたせいで、頭が……」
いえ。別にあなたの激しい行為で、朝から×××××になってるわけでは。
そしてエリオットはキスをしながら私のシャツの前をはだけ、手を滑り込ませる。
……すみません。本当にすみません。今、シャツ一枚羽織っただけの姿です。
下着は着られる状態にございませんで。本当、ごめんなさい。
「お詫びに、×××××やるからな」
私は首を激しく振り、丁重にエリオットから距離を取ろうとする。
「いえいえいえ。お詫びと仰るなら、朝は健康に目覚めてですね。食前の腹ごなしの
デザートと朝食と、デザートと食後のデザートと食間のデザートをいただく方が」
胸を愛撫する手をつかみ、何とか引きはがそうとするが、敵は強かった。
「おまえ、朝からどれだけ甘い物を食うつもりだよ」
イヤイヤする私の腰を抱き寄せながら、呆れたように言い……ピンと耳を立てる。
「そうだな。なら俺は、食前の腹ごなしと朝食と行くか」
と、私の顔をベッドに押しつけ、うつぶせにさせる。
……あ、後ろをいじられてちょっと気持ち良い。
「いえいえ、エリオット!腹ごなしっていうのは、食後の運動によって、胃の消化を
助けるなどの行為をさすのであり、あなたの用法は全くの間違いです!」
「ナノ」
「はい……ん……エリオット?」
枕に頬をつけ、純真無垢を装い、ツッコミを入れたそうな三月ウサギを見上げる。
エリオットは私の腰を高く持ち上げ、潤いを増す後ろを慣らしながら、ニンマリ笑う。
「じゃあ、こうしようぜ。朝食におまえを食って、その後におまえと食後の運動を
して、腹ごなし。これで正しい用法だろ?」
「ん……それ意味が無いというか……や……結局食べてるのはエリオットだけ……」
が、マフィアなウサギは私の後ろに凶暴な××をあてがい、邪悪な笑いを浮かべる。
「安心しろよ、ナノ。おまえにはもっと良い物を××させてやるからな」
「いえ、そういうお下品なネタはちょっと……」

しかしその直後、私はシーツをつかんで叫ぶしか出来なくなってしまいましたとさ。
どっとはらい。

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