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■三月ウサギと小さな痛み4

――止めるんですか?
期待と、少しの失望、それに謎の申し訳なさでエリオットの身体を見上げる。
するとエリオットは手をのばし、ベッドサイドの引き出しから小瓶を取り出した。
次に、サイドテーブルに置いてあって酒をグラスに注ぎ、小瓶の中身を数滴振る。
そして私の身体を支えるように起こし、口元へグラスを持ってきて、
「飲めよ」
私は無言で首を振る。お酒は飲まないし、何が混入されてるか分からないものなら、
なおさらだ。エリオットは舌打ちし、自分でそれをあおった。
そして私の肩を抱くと、唇を押し当てた。
――ん……。
アルコールの混じった液体が流しこまれ、身体がかーっと熱くなる。
――エリオット……!
抗議をこめてにらもうとし、身体の奥がドクンと鼓動を打つ。
――え?あれ?私……。
「さすがに即効性だな」
エリオットは笑って、改めて私を押し倒した。
熱はどんどん強くなり、やがてそれは私の頭から足先までを飲みこんだ。

暗い部屋に二人の息づかいが響く。
ランプも消え、光源は窓から差し込む月明かりだけだ。
私たちはまるで恋人同士のように互いの身体を求めていた。
――ん……ん……。
どこもかしこも熱くて熱くて仕方ない。目の前の人が欲しい。
誰だかよく分からないけれど、それとときどき身体が痛む気もするけれど。
「ナノ。そんなに舐めるなよ……」
シャツをはだけた身体に舌を這わせる私に、彼が苦笑する。
――入れて……早く入れて、お願い!
でも声は出ないから涙目で懇願する。この熱をどうにかしてほしい。
下は触れられる前から濡れそぼっており、彼に指で少し刺激されただけで何度か
イッてしまった。それでも止まらない蜜がシーツに染みを広げている。
「分かったよ。すぐに入れてやるから、少し待ちな」
目の前の彼は十分に反応している自分の……を確認し、前を緩める。
その動作が遅いように思え、私も手をかけ、露出させた。
「ナノ……」
彼の声。どこか優しい、でも悲しそうな。
両手を差し出され、迷わず彼の手を取る。
――……っ!
膝の上に抱き上げられ、大きく足を広げさせられる。
そして愛液があふれて止まらない箇所に熱いモノがあてがわれた。
「いくぜ……」
――……あ……ああ……っ!
言葉が出せたら絶叫していた。とても熱い何かが中に入ってきた。
私は迷うことなく腰を下ろし、彼を全身で受け入れる。
「はは。本当にすごい効果だ。一気に奥まで入った……な」
言うなり、猛烈な勢いで私を揺さぶり出す。
――あ……あ、あ、ああ……やだ……あっ!
涙がこぼれる。突き上げられるごとに声の無い声で叫び、彼の身体を抱きしめ、強く
しめつけた。内側で彼がこすれるたびに気持ち良すぎて涙があふれる。
「もっとしがみつけ……ナノ……」
――はい……あ、ああ……!
「あんたは最高だ、ナノ……柔らかくて、よく滑る……」
打ち込む速さや角度を何度か変えながら彼が言う。
もうイッてしまわないよう自分を抑えるだけで精一杯だった。
――はあ……はあ……あ……あ……。
打ちつけがますます速くなり、どんどん視界が白くなる。
「ナノ……出すぜ……」
汗ばんだ彼が言う。私は何度もうなずいた。
一瞬だけ、私と彼の視線が合う。そのとき、名前もよく分からないこの人と何かが
通じ合った気がした。でもひときわ強く突き上げられ、それも霧散した。
「ナノ……ナノ……っ!」
――あ……ああ……ああああっ!
大きくのけぞり、抱き寄せられて爪を立てる。
中で大量の何かが吐き出され、私は至福の内にその感触を味わった。

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