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■三月ウサギと小さな痛み3

時間帯が夜に変わり、ベッドサイドのランプがぼんやりと光る。
「はあ……はあ……ああ、やわらかいな。すげえいい……」
エリオットが浮かされたような声で言う。
私にキスをしながら、服ごしに胸を愛撫するのに懸命なようだった。
けれど私の意識はエリオットに抱かれようとしていることより別のことにつられている。
――痛い……脇腹のあたりはまだ治ってない……。
「嫌だろうけど……本当に……」
エリオットはまだ勘違いしている。私がほとんど抵抗せず、泣いて震えているのは
抱かれるのが嫌だからだと思っているらしい。
「ナノ、本当にすまねえ……でも俺は……」
言いかけて止める。言い訳は見苦しいと思ったのだろうか。
代わりに遠慮無い力で抱きしめ、身体をまさぐり、服を少しずつ緩めていく。
「……っ!」
襟元を緩められ、鎖骨のあたりにキスされる。
長い耳が私の髪のあたりに触れ、少しだけ私は自分の置かれた状況を忘れられた。
けど、もちろんエリオットはそれでは許してくれない。
肌に直接触れたことで、服ごしでは我慢出来なくなったらしい。
「ボタン、外すぜ……いいよな」
「…………」
私は無反応にエリオットを見上げる。
エリオットは自虐的にフッと笑い、上から一つ一つを丁寧に外していく。
「ん……」
――あ……いや……っ。
肩がむき出しになり、胸の布地をずらされた。
薄明かりで半脱ぎになった私を見て、エリオットはボタンを外すのを止めた。
そしてうっとりとして、胸に大きな手を伸ばす。
私は反射的に胸を守ろうとしたけれど、うるさそうにはらわれた。
――……や……。
エリオットは布地を完全に上にずらし、その下に現れたものをじっくりと眺める。
「あんまり反応してねえな。まだ本調子じゃねえか?」
――ん……っ。
胸の敏感な箇所を指の腹で刺激される。
そのまま、強い力で両の胸を揉みしだかれ、執拗に舌で舐められた。
――ん……だめ……っ!
身体がじわりと熱くなり、中心部がむずむずする。
エリオットも気づいたのかニヤリと笑い、下腹部の方へ手を伸ばしてきた。
慌ててエリオットの手をはらいのけようとするけれど、逆にその手を押さえられた。
――……っ!
たまたま痛い箇所を押さえられ、声を出せないままうめいた。
さすがにエリオットも私がおかしいと気づいたようだ。
「……ナノ、さっきから何か痛そうにしてねえか?そんなに嫌か?
でもブラッドも妙なことを言ってたな。あんたが痛がるかも、とか。
今さら痛がる段階でもないのに変なことを言うとは思ったんだけど……」
けれど私は返答出来ない。
エリオットは少し迷ったらしいけれど、最後には無視することにしたようだ。
「悪い……時間がないんだ。なるべく気持ち良くなるようにするから……」
そう言って私の下腹部に改めて手を伸ばした。

――ん……あん……。
胸を舌で、下着越しに指で弄られ、頭がぼうっと熱くなる。
「ほら、もっと足を開けよ……こんなに濡らしちまって……ほら、ここは?」
ぎゅっと一点を摘まれ、息が上がる。笑いながらもエリオットも少し息を乱れさせ
ている。私は痛みを忘れ、見せかけだけ嫌々と首を振りながら、胸を貪るエリオット
の頭を抱きしめた。
――やん……あ……。
銃を使い慣れた硬い指が、下着の中へゆっくりと入り込む。
ぐちゅっとわざと音を立ててかき回され、息を呑んだ。エリオットは笑いながら、
「可愛いな、あんた」
ごまかしようがないほど反応した私の胸と顔を嬉しそうに言う。
「好きでも無い男に抱かれて、こんなに濡らして……本当にいやらしいんだな」
――そんなこと、言わないで……んっ。
真っ赤になって首を左右に振るけれど、エリオットの指が中に入り、背をのけぞらせた。
――だめです……やだ……っ!
指がずぶりと内に入る刺激。それだけでイキそうになる。
「そう締めつけるなよ。すぐ、もっとイイもんを入れてやるからさ」
必死にこらえる私にエリオットは苦笑し、ふと笑顔を消して、
「……あんたの声、聞きたかったな。いや、ダメだ……泣く声は聞きたくねえな」
エリオットは私の反応を見ながら残念そうに言う。
そして光る糸を引いて私の胸から顔を離すと、
「脱がすぜ。あんたを全部見たいんだ」
――っ!
私は首を必死に振った。けれどエリオットは無情に下から指を抜き、服に手をかけた。

「……なんだ、これ」
全裸の私を見下ろすエリオットは、さすがに驚いたようだった。
まあ、それはそうだろう。身体のあちこちに傷やアザがあるんだから。
「……この間ブラッドが荒れたときか?」
首を振る。ブラッドは激怒しても女に暴力をふるう人では無い。
エリオットはホッとしたようだった。でもすぐに厳しい表情になり、
「となると騎士、か。確か森で襲われて、それでブラッドが荒れたんだったな」
知られていたのは恥ずかしいけど、うなずくしかない。
エースから逃げていて、すっ転んだのだ。しかも転んだのが坂道だった。
崖では無いだけマシとはいえ、木だのむき出しの岩だのにぶつかって散々だった。
しかも追ってきたエースにそのまま襲われた。
終わった後に簡単な手当はしてくれたけど……その傷がまだ完治していない。
「なるほど。ブラッドが怒ってたのはこのことか。最初に教えられてたら、さすがに
俺でも萎えたかもな……騎士の野郎、会う機会があったら必ず始末してやる……」
そう言うと身体を起こした。

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