続き→ トップへ 短編目次 長編2目次

■真っ白な夢

※R18

夢を見た。

ここはどこだろう。真っ白で何もない部屋。
あるのは扉とベッド。あとは長いこと使われた形跡のない、少々の家具。
私は下着姿で真っ白な壁にもたれ、ぼんやりと宙を見ている。
考えるのはエリオットのことだけ。
この前はどう愛してくれたか、どんな優しい言葉をかけてくれたか、次はいつ来て
くれるのだろうか。
他は何もしない。
人としてすべきことは全て、この真っ白な部屋にときどき入ってくる使用人さんが
代わりにやってくれる。
一切を引き受けてくれる彼女らは、私と口をきくことが許されていない。
私もエリオット以外と話さない。

やがて、真っ白な部屋の扉が開く。そして見える長い耳。
また使用人かと失望にそなえていた私は顔を輝かせる。
「エリオット!」
「ナノ……会いに来たぜ」
私はエリオットのところに走ろうとし……鎖に足を取られ、転んだ。
そうだ。私の足には鎖がつけられている。
まだこの部屋に入れられたばかりの頃、逃げようとしてつけられたのだ。
もうそんなことは絶対にしないのに。
「悪いな。ほら、今外してやるよ」
エリオットが鍵を鎖の錠に差し込み、私は解放される。
そしてエリオットの腕の中にすぐに囚われる。

「エリオット……」
私は緩い笑みを見せ、キスをねだる。
エリオットもすぐに答えてくれる。唇が押しつけられ、互いに互いの舌を求め合う。
唾液の絡むいやらしい音。私は興奮して、下半身をエリオットに押しつける。
そしてエリオットは、私の腰の動きに気づいたようだ。
「おいおい、もう濡れてるじゃねえか」
下着の上からじっとり湿った秘所を探られ、私は獣のような声を上げた。
エリオットが欲しくて欲しくて。でもエリオットは直には触れてくれず、薄い下着の
上から、濡れた谷間や突起を荒く撫でこする。
「はあ……あん……」
私はそれが焦れったくて、エリオットを上目遣いに睨みつけた。
「そう急かすなよ。本当にいやらしい女だな、おまえは……」
笑いながら、下着の中に手を入れ、私の一番触れてほしい箇所を可愛がってくれる。
私は息も荒く、足を開き、彼の手に下半身を押しつけた。
ベッドに移る間も惜しく、私は指で上もそっとまくり、エリオットを誘う。
「可愛いな……おまえは本当に」
大きな手に胸が包まれ、安堵の息が漏れる。
優しく愛撫され、敏感な箇所をいじめられ、熱が上がるばかりでどうにかなりそうだ。
「エリオット……」
あなたが欲しい、と欲情して潤んだ目で訴える。
エリオットも苦笑して、前を緩め出した。

真っ白い部屋に、甘い声と音が響く。
私たちは床の上でつながり、激しく互いを求めていた。
「エリオット……あん……エリオット……ああ……っ」
「ナノ……はあ……あ……」
飽きることなく欲望をぶつけ、エリオットは何度も名前を呼んでくれる。
私は待ち望んだ凶器に、愛液をとめどなくあふれさせ、濡れた音を増幅させる。
「あ、あ、ああっああ……っ!」
もっと欲しくて自分から身体を動かし、奥へ奥へと誘う。
そんな私に笑い、キスをし、胸を、下を絶え間なく愛してくれる三月ウサギ。
彼に怯え、忌避していた昔の自分が信じられない。
この部屋に入れられたときもそうだった。
逃げようと扉を叩き、ベッドを切り裂いて暴れ、鎖につながれその状態で強制的に
抱かれて、いつも泣いていた。
でも、いつしか変わった。
鎖につながれ、長い時間帯、真っ白な天井と壁を眺め、エリオットを待ち、彼に抱かれ、
彼としか会話が出来ない生活の中で
気がつくとエリオットにだけ笑みを浮かべ、エリオットを待ち望む自分がいた。

「ナノ……っ!」
エリオットが欲望の全てを吐き出し、私に覆いかぶさる。
私は笑顔で彼の全身を受け止め、キスをする。
三月ウサギも優しく笑って私の髪を撫でてくれる。
「ナノ、愛してるぜ。おまえは最高の女だ」
「エリオット……」
つながったまま抱きしめあう。
と、内におさまったエリオットの×××が硬さを増す。
私はもちろんそれを歓喜のうちに受ける。
「もう一回、いいな?」
何度だって。私はうなずき、もう一度熱いキス。
エリオットは私の膝に手を当て、大きく開かせ、そして動き出す。
私は声を上げ、床の上で獣のように悶えた。
「好きだぜ、ナノ……今のおまえが、一番な……」
さっきよりも熱を持って打ちつけられ、私は声を上げることしかしない。
「俺のことしか見ない、俺にしか笑わない、俺とヤることしか考えてない。
俺の名前以外は言葉も忘れた、壊れたおまえが、な……」
その声にどこか悲しみの欠片があった気がした。
でも貪られる悦びのうちに、私は何も分からなくなってしまった。

そしてどこからか、聞いたことのある声がする。

『これは三月ウサギの見ている夢でもある。
遅れたが、あいさつ代わりに受け取ってくれ。
……ようこそナノ』

…………

目を開けると小屋の天井だった。
――て、夢オチですかっ!!
いや、冒頭で夢だって自覚はあったけど。あー、びっくりした。
なんだか最後、変な声が聞こえた気がするけど……。
忘れてしまった。

私はベッドの中で自分の妄想のほどに真っ赤になった。
いやいやいや。可憐で儚げな美少女なら、あんな空間が似合うだろうけどさあ。
私は外見的にちょっと……ね。と、自虐しつつ少し寝返りを打とうとし、
「……っ!!」
瞬間、脇腹の激痛に意識が飛ぶかと思った。
自分の身体を見下ろすと、全裸なところ、脇腹に軽く包帯を巻かれている。
本当にかるーく、だ。というか嫌な色の液体がにじんでます。
「…………」
この傷を作るに至った経緯は極力、頭から排除する。
動かないこと、だ。エリオットが戻るまで待つしかない。
今は彼がこの小屋の主だ。
彼に従うしかない。
――……お茶の木……。
どれくらい眠っていたのだろう。
ここの植物は生育も早い。早くしないと摘み取りシーズンが過ぎてしまう。
でもこの身体では動けない。もうあきらめるしかないだろう。
どっちにしろ、最初の摘み取りなんてほとんど調整で行うものであり、収量も品質も
不安定だ。そう考え、何とか自分を慰める。

――元気を出さなきゃ……。

お茶の木は繰り返し、摘み取ることが可能だ。
時間帯はかかっても、いつかは美味しい緑茶や紅茶がきっと飲める。
だから元気を出そう。
例え顔なしの地位が底辺で、誰にも守ってもらえなかったとしても。
エリオットは今、ちょっと機嫌が悪くておかしくなってるだけだ。
すぐにまた、私に飽きるか目が覚めるかして、元のエリオットに戻ってくれる。
そう思いたい。

……でも元のエリオットに戻ったとき、私はどうなっているのだろう。
あの白い空間のお人形のようになっているのだろうか。
また畑の前でエリオットと普通に会話出来るときが来るのだろうか。
考えるほどくじけそうだ。

そして扉の開く音がした。

5/5
続き→
トップへ 短編目次 長編2目次


- ナノ -