続き→ トップへ 短編目次 長編2目次

■限界1

※R18

木々の梢が青々として、鳥たちの声は美しい。
そして、その自然の茂みの中で私は美しくない格好をしている。

「はあ……はあ……」
「ん……」
何もつけていない下半身を大きく開かされ、何度も何度も押し入られる。
ぐちゅぐちゅといやらしい音が響き、喘ぎ声が小鳥の音色に混じった。
上着は脱がされてないけど、前を大きくはだけられ、愛撫の跡がヒリヒリする。
揺さぶられるたび、頬や頭に、茂みの枝だの葉っぱだのがチクチクと刺さった。
――ああ……鳥さんの声がにぎやかですね……。
私は近くが気になって仕方ない。
近くで、愛らしい小鳥さんたちが、私のパンを寄ってたかってつついてるのだ。
ここで自由になったら全て焼き鳥にしてやるのに……。
「あ、あ、ああ……っ」
「ナノ……ナノっ」
突き上げられ、深くを揺さぶられ、腰をつかむ手はアザになりそうな強さだ。
熱い。頭の芯まで溶けてしまいそうなくらいに、エリオットが熱い。
と思うと、エリオットがかがみ、私にキスをする。
私もそれを受け入れ、エリオットの服をつかみ、抱きしめた。するとエリオットは速度を増し、さらに揺さぶってくる。
「はあ……あ……あ、あ……っ」
肌のぶつかる音がやけに大きい。それと小鳥の忌々しい声、木々のささやき。
「……く……っ……」
「…………」
やがて、少し余韻を残しながら、エリオットの動きが緩慢になり、止まった。
そして私の頬に手を当て、そっとキスをした。
ゆっくりと内を圧迫していたものを出し、それをつかむと、私のお腹のあたりに……
ええと、白い物が……その、私のお腹のあたりに放たれる。最高に嫌な生ぬるさだ。
そして私はのろのろと身体を起こすと、エリオットの×××に手を添え、舌を出す。
散々にしつけられ、身についた悲しい習性だ。
「ん……」
苦くぬめる物を舐めとり、きれいにする。報酬は頭を撫でられるだけ。
そしてエリオットは軽くぬぐってそれを内に収めると、そのまま背を向け、道の方に
去って行った。私は茂みの中で少し座り込む。
結局、最初の一言以外に会話らしい会話もなかった。
パンの飛んだ方向を見ると、最後の一切れが小鳥さんに持ち去られるところだった。
――鳥が嫌いになりそうですね。
三食分のパンとスープをダメにした。それについても詫び一つない。
――身体を洗いませんと。
私は葉っぱや草でお腹の液体だけぬぐうと、服を整え始めた。

…………

小屋の裏手で、貯水に使っている樽(たる)のコックをひねる。
あれから時間帯が昼間に変わり、私は汚れている。
蛇口からきれいな水がほとばしり、桶(おけ)にたまっていった。
「…………」
私は今、何も着ていない。今すぐ身体を洗いたいのだ。
そして布を絞って、身体を拭いていく。
アザや傷の跡を軽く清め、赤い液体をぬぐい取る。
本当はシャンプーや石鹸を使いたいのだけど、ここにそんなものはない。
汚れがきれいになる世界でなかったら、私の身体はもっとひどいことになっていただろう。
最後にもう一度、樽のコックをひねり、シャワー代わりに頭に浴びせる。
さっきは茂みだったので、枝や葉っぱで少し傷がついた。
せっかく使用人さんたちが薬を塗ってくれたのに台無しだ。
元の世界なら、彼は確実に逮捕、投獄されるだろう。
世間の人もきっとすごく同情してくれる。
でもここでは一切、罪に問われない。同情も、通り一遍だけのもの。
……ここは異世界だ。

「あ……」
気がつくと樽の水が止まっていた。うっかり出し過ぎてしまった。
また樽をいっぱいにするまで、川から水を何往復もして運ばないと。
私は布を絞って、髪を拭く。
そして服を着ようと、手を伸ばすと……その手を誰かにつかまれた。
振り返らなくても、誰か分かる。
「っ!」 
そのまま、水にぬかるむ地面に引き倒された。
「エリオット……待っ……」
あーあ、今洗ったばかりなのに。髪も身体もメチャクチャだ。
私を引き倒したエリオットはというと、どうにか用事を終わらせてきたらしい。
「……っ」
さっきは夕暮れで気づかなかったけど、彼は赤い液体を服に付着させていた。
匂いに気をつけると、硝煙臭が鼻をさす。どうも抗争か何かの帰りだったらしい。
まだ水滴の残る私の裸身を見て、やや荒い息でエリオットは前を緩める。
「ナノ……ナノ……っ!」
覆いかぶさり、私はきつくきつく抱きしめる。
エリオットは地面がぬかるんでいることも気にしない。
ついでに、そのぬかるみで私が汚れることも。

まあ、泥がなくても私は十分汚れているのですが。

2/5
続き→
トップへ 短編目次 長編2目次


- ナノ -