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■甘やかされた話17

※R18

グレイはうなだれていた。
ずいぶん長いことうなだれていた。
それはもう、大丈夫かと思うくらいに。
「……ごめんなさい。グレイ。本当にごめんなさい」
何度謝っても謝り足りない。
どれだけ彼を傷つけたかと思うとやりきれない。
「ナノ……」
グレイがやっと顔を上げた。
「グレイ……」
私は上目遣いにグレイを見上げる。どれだけの罵声が飛んできてもいいように。
心もち身を固くして身体を縮めて。

コツン。

頭を軽くぶたれた。

「へ?」
見上げるとグレイが笑っていた。
「馬鹿だな。そんなどうでもいいことで、ずっと悩んでいたのか?」
「……へ?」
そうして、グレイは今ぶったばかりの場所を撫でる。
思わぬ対応に私は返って戸惑う。
「だ、だって、愛してるとか、思いが通じて嬉しいとか、あんなに……」
「君に甘えさせてもらっただけだ。あれだけ、いつもぎこちなく、緊張した様子で
過ごされて、本当に相思相愛だと思うほど自惚れてはいないさ」
「…………え?」
ちょっと待って。ちょっと待って。
「グレイ……私が、グレイを好きじゃないかもしれないって気づいてたんですか?」
するとグレイはバツが悪そうな顔で、
「この部屋に置いて、優しく接していれば、いつかは君もこの部屋と俺に慣れて、
気持ちが通じることもあるだろうと思っていた。
ドアに迷い出るまで悩んでいたこと、茶がまずかったことは計算外だったよ」
……ツッコミ入れるべきかシリアスに受け止めるべきか。
――えーと……。

状況を整理しよう。
つまりグレイは私に告白され、とっとと荷物を自分の部屋に移し、私の塔引っ越しに
成功。まあ、その後の態度から、本気の告白じゃなかったのかもなと薄々気づきつつ
私が大人しく部屋にいて、甘えさせてくれるからそれはそれで結果オーライ。
そのうち好きになってくれるだろうと思い、懐かせようとあれこれやっていた。
が、計算外だったのは、私の悩みが想像以上に深刻で、迷い出るに至ったこと。
あと、そもそものきっかけの茶が途方もなく不味かったらしいこと。
……整理し切れてないかも。

「俺も、少し反省しなければならないな。君の親切につけこんで何も教えず、部屋に
とどめようとした。一緒にいたいなら、もっと腹を割って話し合うべきだったよ」
私もうなずく。私は迷惑がかかる、を言い訳に伝えたいことを伝えなかった。
グレイは大人で、私はためこみすぎて、互いに一枚くるんで話をしていた。
「それで、どうする?俺を愛していないのなら……この部屋を出て行くか?」
グレイの声は少し強ばっていた。
私は首を横に振る。あのドアを通って私はグレイの部屋に帰ってきた。
「ここにいたいです。あのドアがここに通じていたくらいだし。
扉を抜ける瞬間は本当に怖かったです。グレイに……もう会えないかと思って」
少し沈黙があった。
「そうか。なら君は、俺にそれだけの好意を抱いていると、うぬぼれていいんだな。
他の奴や、時計屋ではなく、間違いなく俺の元にいたい、とどまりたいと」
今度は私が少し沈黙し、グレイの瞳をまっすぐに見て、うなずいた。
少し恥じらいながら微笑み。
「……はい」
瞬間、勢い良くベッドに押し倒された。

「ちょ、ちょっとグレイ!」
私は大慌てでグレイの肩をつかんで止めようとする。でもグレイは止まらない。
「ひ、昼間だし、お仕事だって……!」
「君が欲しいんだ。今すぐに!」
さっきの比ではない。かみつくようなキスをされ、口内を強引に荒らされる。
「ん……んん……っ」
私もグレイを必死で抱きしめ、同じくらいに強く、舌を絡める。
「ナノ……っ」
「グレイ……グレイ……!」
再度、前をはだけられる。手が荒く、性急な仕草で全身を愛撫した。
そして手が下半身に及んだとき、私のそこはしっかりと潤って、彼を待っていた。
「ん……や……っ」
彼の息づかいが耳元で聞こえる。
欲望を抑えきれず、それでも私を気づかい、何度も口づけてくる。
「や……だ、ダメ、グレイ、それは……っ」
下の服を取り払われ、大きく足を開かされる。
今さらながら、羞恥を感じて足を閉じようとするけれど、その前に彼の両手で足を
しっかりと押さえられ……その……
「やあ……ダメ、いや……あ……ああ……」
音を立てて、舐められてます。ええと、頭の芯まで、どうにかなりそうです。
気まずくて恥ずかしくて気持ち良くて、逃げようとするけれど許してくれない。
そしてグレイが顔を上げ、私に優しくキス……味はノーコメントで。
「ん……っ」
指が優しく中に潜り込む。強ばる私をなだめるように、ゆっくりと解していく。
「あ……やあ……」
ぐちゅぐちゅといやらしい音がとどき、私の息も荒く、体温が上がっていく。
やがてゆっくりと指が抜かれ、グレイが、
「ナノ、いいな?いいだろう?」
「えーと……ダメ」
「それは認められないな」
え。聞いた意味なくないですか。
けれどグレイは性急に上着を脱ぎ、その間も何度か私にキスし、前をゆるめる。
私ももう腹をくくって足を開き、ベッドの脇に用意してあった砂時計に手を伸ばす。
ひっくり返すと、外はたちまち宵闇に包まれる。
「……これでは君の身体が見えないだろう」
ベッドサイドのランプをつける時間も惜しいのか、私の深い場所にあてがいながら、
グレイは不満そうに言う。
「んー、月明かりに浮かぶあなたの方が、きれいだから……」
「男にきれいはないだろうナノ」
「だって本当に…ん……っ」
そして深くに押し入られ、もう何も考えられなくなった。

数えるのが馬鹿らしいほど強く、激しく責め立てられる。
「ナノ……ナノ……っ」
「グレイ……」
互いに手を絡め、キスをし、何度も何度も名前を呼び合う。
理性も忘れたように責め立て、わずかな汗が私の身体にこぼれた。
「君が好きだ……君がそうではなかったとしても……」
「私は……あなたのそばを離れるのが嫌……耐えられない……」
すると責めが激しさを増す。
足を抱えられ、ガクガクと揺さぶられ、動きが激しすぎて落ちそうになり、グレイに
支えられ、互いに少し笑い合う。
そしてキスをする。私は甘やかされ、言えなかったことを口にする。
「私、あなたに迷惑をかけているのが、ずっと申し訳なくて……」
「君にかけられる迷惑なら、甘んじて受けるさ。いや、君に迷惑をかけられたこと
なんて一度だってない……」
動きがさらに速まり、理性をはぎ取られそうに鳴りながらも言葉を続ける。
「嫌われるのが怖かった……呆れられて、そばを離れるのが……」
だから、自分から去ろうとした。
「あなたのことで、ずっと頭がいっぱいだったから……」
するとグレイが私の足を抱えたまま、私に顔を近づける。
貫かれる深さが増し、私は涙に濡れた目でグレイを見上げる。
「それは、俺が好きだということじゃないのか?」
「え……」
もう一度キスをされる。
そして自分の内に放たれるものを感じ、私も達し、何も分からなくなった。

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