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■甘やかされた話3

※R18

窓の外には麗しい月と美しい星空が見える。
こんな夜に、のんびり珈琲を飲めたら素敵なんだけどな。
「……っ!」
下から突き上げられ、快感と鈍痛で息が止まる。
「ナノ、何を考えてるの?」
手を伸ばし、私の胸を弄りながら騎士は言う。
「ん……あなたのことを……や……っ」
より深くに埋め込まれ、悲鳴が上がる。必死で息を整えているけれど力で押さえられ
快感を人質に取られ、こちらに勝ち目があるわけがない。
「嘘をつくのは悪い子だ」
そして私の腰をつかみ、より下に、さらに奥深く沈める。
「あ……ああ……っ」
イタズラするように前を弄られ、愛液がまたじわりと漏れる。
これで合意の関係ではないと言われても、誰一人信じないだろう。
「全部入ったな……じゃあ動くぜ」
「ま、待って、エース……」
「可愛いよ、ナノ」
そして腰を揺さぶられ、私の口から嬌声が漏れる。
「や……ん……っ」
「すごく気持ち良い……ナノ、もっと声を出してよ」
「あ、あ、ああ……ん……やあ……っ」
素直に声を出す。
自分でも分からないまま涙があふれ、あられもなく胸を揺らす。
頭の芯まで快感に支配され、突き上げられるたびに理性がはぎとられていく。
「はあ、あ、あ、……あ、……エース?」
気がつくとエースが腰をつかむ手を止めていた。
でも気持ち良くなりたくて、私は勝手に腰を動かし、喘ぎ声を出す。
エースは爽やかに笑い、
「はは。激しいな、ナノ。本当に……いやらしいな」
「ん……あ……エース……っああ……あん……」
緋のまなざしで見据えられ、身体が熱くなる。
私は必死に腰を上下させる。
達して、エースの熱を内に受けるまで。
夜は終わらず、つながった箇所からはいやらしい水音が、絶えもせず続いていた。

…………
太陽の光がまぶしい。
「楽しかったな、ナノ」
私に続いて建物から出て来たエースは私の腰を馴れ馴れしく抱き、頬に口づける。
そして耳元で低く、
「ナノ。最高だった。すごく良かったぜ」
「……あなただけが、ね」
疲れ切った身体と睡眠不足の頭で低くうなると、
「あははは。乗ってたのは君もだろ?責任転嫁は良くないと思うな」
「もう二度と来ないで下さい。あなたの顔は見たくもありませんから」
「行くよ。拒まれても力ずくで連れて行っちゃいそうだ」
「…………」
自分の表情は分からない。
ただ、笑顔を消した私の今の顔が、騎士様を喜ばせたのは間違いない。
「……そそるな、その顔は」
「っ!」
嫌な予感がして、走ろうとしたけど遅かった。
エースが私の手首を素早くつかみ、引き寄せる。
「明るいうちだけどさ、もう一軒行かない?まだ大丈夫だろ?」
そう言って私に唇を重ねた。
「エース、ここをどこだと……っ!」
派手な外装の建物。余所者の自分と役持ちの男。嫌でも人の噂になる。
「ん?誰も見てないだろ?」
エースに道を振り向かせられた。
確かに道行く人は誰も見ていない。急いで視線をそらしただけだ。
でも私は言いなりになるのが悔しくて何とかエースの手をほどこうとした。
「離して……この、犯罪者……!」
「それで全力?ナノは本当に可愛いなあ」
エースは私の奮闘を楽しそうに見下ろしていたけど、飽きたのか手を引っ張って歩き出した。
「エース。本当に疲れてるんです。私には店だってあるし……」
「そうだね。たまには宿泊代以外にも払わないと」
いっそ優しい声でそう言い、恋人のような愛おしげな目で私を振り向いた。
「いくら欲しい?」

…………
やっとエースから解放され、私は足取りも重く街を歩く。
結局、この数十時間帯、ほとんど眠っていない。
金銭に関しては断固として拒否したけど、それで流れが変わるわけもない。
「…………」
何だかとても疲れた。あちこち痛いし、何より心が痛い。
放っておいてほしいのに、何で余所者は好かれるんだろう。
好かれる割にまともな扱いを受けられない私だった。
「はあ……」
フラフラと歩いていた私の視界にベンチが入る。
ひとけのない公園の、捨てられたような寂しいベンチ。
「…………」
吸い寄せられるように座ると木の感触が冷たい。でもどうでもいいですか。
私は目を閉じ、やっと休憩を取ることが出来た。

…………

薄目を開け、最初に感じたのは暖かさだった。

「ナノ?起きたか」

声をかけられ、怠惰に顔を上げた。
「グレイ……」
塔の補佐官殿が私の横に座っていた。
「こんなところで眠ってはいけないよ。帽子屋の連中に見つかったら連れていかれる
だろうし、役持ちでなくとも君に焦がれている者は多いんだ」
嗚呼、余所者好かれルール。迷惑極まりない。
グレイは外回りの最中らしい。彼は端正な顔を申し訳なさそうに曇らせ、
「すまない。また辛い目にあったそうだな。俺が見ていなかったばかりに……」
私に起こったことは、おおよそご存じらしい。
「いいえ。グレイのせいじゃないですから」
というか、自業自得です。助けると言った彼の前から全力で逃げましたし。
申し訳なくて情けなくて、グレイの身体に頭を預ける。
「俺は……俺なら、君を傷つけたりしないのに……」
「…………」
私は返答しない。

でも、抱き寄せてくれる腕は、どこまでも暖かく、優しかった。

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