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■改装話の後日談6

※R18

音がする。私の声と『飼い主』の声と、ペンの音。
「ん……やあ……あん……」
「ほら、足を開きなさい、お嬢さん」
「なあブラッド、この書類なんだけど、これでいいか?」
「あ……い……や……」
「押さえては意味がないよ。お嬢さん……エリオット。まだ間違いがあるぞ」
「あ…やあ……」
「やっぱ分からねえな……くそっ……」
私も分からない。ブラッドがソファに座り私を膝に乗せて抱きしめ、目の前では
エリオットが大まじめに書類仕事をしている。なぜかニンジンケーキも置いて。

帽子屋ファミリー。ペーターの仕掛けた抗争は無事に制したらしい。
二人は抗争が終わってそのまま来たらしく、液体のついたスーツ姿で現れた。
この時間帯の飼い主はエリオット一人のはずだった。
けど、ブラッドが来たからといって私がどうこう言えるわけがないし、エリオットも
当たり前の顔をしている。
そしてボスに先を譲るつもりのようだった。
「頑張って書類を完成させろ。お嬢さんもおまえを待っている」
そう言って、私の上着をたくし上げ、胸があらわになるようにした。
「いやあ……ブラッド……っ!」
「ブラッドぉ〜、焦らせるなよ」
エリオットはチラリと私を見て書類に戻った。明らかにさっきより集中し出した。
ブラッドは私の耳に舌を這わせ、低くささやいた。
「さて、私たちが抗争で忙しいときに、君に似た少女が、白ウサギと駆け落ちする
姿を見たと。そんな情報が入っているが何かご存じかな」
「…………っ」
「そして時を前後して白ウサギから夢魔に、君の扱いを承認するとの連絡が入った。
今後は我々を妨害しない、その代わり君の正当な扱いや虐待の有無を監視するため
自分も『参加』させてほしい、と。大した詭弁もあったものだ」
ブラッドはくつくつと笑う。
「そうですか……」
よく分からないけれど、ペーターもここに来ることになるようだ。
「嬉しいよ、ナノ。この状況を受け入れてくれて、な」
「…………」
そしてブラッドは私を立ち上がらせると、ゆっくりと下の着衣を脱がし始めた。
エリオットの前だけど、私も逆らわない。
けどブラッドは私の腹部に手を這わせ、眉をひそめる。
「痩せたな、ナノ。報告ではほとんど食べていないと聞いたが」
「ごめんなさい……」
ブラッドはそんな私をだるそうに見て、
「謝られても困るな……エリオット。そのオレンジ色の物体を寄こせ」
「おうっ」
エリオットはケーキを渡すとき、一瞬だけ私の下半身を見た。
それから猛烈な勢いで書類仕事に取り組みだした。
ケーキ皿を受け取ったブラッドは、
「見るも汚らわしいものだが、今はこれしかないからな」
そしてブラッドはまた私を膝に乗せて、嫌そうにクリームを指先に取ると、私の口元
にさし出した。仕方なく口を開くとクリームごと指が入ってくる。
「ん……ん……」
甘い。
思わず飲み込み、手袋を舐める。
「そう、おねだりするな。お嬢さん」
そしてまた少しケーキをすくった指が差し入れられる。
同じく抵抗せずに飲み込み、舐め回した。
全て食べ終えるまで、ほとんど時間はいらなかった。
「ん……」
「これで行為の間くらいは保つだろう。気分はどうだ?」
「……ええと……」
――ええと……あれ……私……。
糖分が頭に回ったせいか、意識が少し明瞭になってきた。
栄養失調のとき、人は思考力が鈍るものだけど、私もそんな感じだったようだ。
――…………。
そしてペーターとのやりとりを思い出す。
「…………」

もしかして、自分はとんでもなく愚かしい真似をしてしまったのではないか。
最後のチャンスを自分から逃がしてしまったのでは。
記憶がハッキリするにつれ、そう思えてきて仕方がなかった。

ブラッドはケーキで汚れた手袋を外して捨てると、
「さて、エリオットが終える前に私たちも一戦交えるか、お嬢さん」
「……いや、いやですっ」
正気に戻りつつある私は何とかそう言った。ブラッドは楽しそうに、
「餌を与えられたら飼い主に反抗か?困った飼い猫だ」
そして私を抱き寄せ、冷酷に言った。
「本当に逃げるつもりなら、食べておくべきだったな。身の不幸に溺れず、従順な
フリをして虎視眈々と時機をうかがい、体力を温存すべきだった。
……意志の弱い君の負けだ、ナノ。全てがな」
「……っ」
ブラッドが私の内面を知るはずがない。
知るはずが無いのに、まるで知っているかのようにニヤリと私に笑う。
エリオットも書類仕事をしながら、横目でこちらを見る。その目は冷徹だ。
「だが君は正しいことをした。我々も、尽くせば見返りがあることを教えよう。
あとは君自身が、つまらない倫理観を完全に捨て、楽しむようになればいいだけだ」
ブラッドは、そう言って私に唇を重ねた。
「止めて……止めてください……っ!」
抵抗はしたけれど無理やり上着を脱がされ、一糸まとわぬ姿にされる。
そして手首を縛られた。
「我々は抗争で疲労しているし、君も体力が万全では無い。
窮鼠猫を噛む……とまでは行くまいが、怪我の可能性は避けるべきだろう」
ブラッドはそう言うとエリオットが書類仕事をしているのも全くかまわず、私を抱き
よせ、今度は向かい合わせに足を開かせ、膝にまたがらせた。
初めてされた体勢ではないけれど、誰かが見ているという羞恥心。そして、逃げる
チャンスを自分から逃したというショックで上手く抵抗出来ない。
ブラッドはむき出しの背中に手をやり、私を引き寄せると唇を重ねる。
「ん……んん……っ」
「君も楽しめばいい、お嬢さん。判断力を失っていたとはいえ、自らここを選んだ
ことに代わりはないのだから」

狂った帽子屋のボスはそう言って笑った。

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