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■はた迷惑な争奪戦・4

グレイは私を背中にかばい、殺意をこめて双子を見る。
「全く、マフィアは下っ端までどうしようもないな。
か弱い女に公共の場で痴漢行為など……吐き気がする」
双子もすぐに冷ややかな雰囲気になり、どこからか斧を取り出した。
「トカゲ、僕らはボスに命じられてるんだ。お姉さんを連れてくるようにって。
邪魔しないでくれるかな」
「そうだよ。お姉さんはボスの女になって帽子屋屋敷でずっとずっと暮らすんだから」
「マフィアのところへナノは渡さん!!」
そして、斧と短剣の壮絶な斬り合いが始まった。
……ええと、どうすればいいんでしょう。
私はどうする事も出来ず、ボーッと成り行きを見ている。
というか、グレイを見て思い出したけど、ココアの本を探しに出て来たのに。
会合といい、皆、退屈してるんだなあ、と思うばかり。
鬼ごっこならもう少し別のものを対象にすればいいのに。
あれ?鬼ごっこ?違うか。ケイドロでもないし。
そういえばケイドロって地域によって呼び方が違うんだったっけ。
で、皆して一つのものを追いかける遊びを何て言ったっけか。サッカーやラグビーではないですよね。ていうかそれならゴールはどこだ。
そういえば、ラグビーとアメフトってどう違うんだっけ。
「ナノ、大丈夫か!?」
「そもそもフットボールとサッカーってどう違うんですかね」
「は……?」
「――は!」
我に返ると、双子は退散した後だった。
そういえば双子はエースより実力的に劣るとか聞いた事がある。
そのエースと互角に戦うグレイが、双子に負けるわけがないわけで……。
すみません。どうでもいいことを考えて戦闘を全く見てませんでした。
グレイは私を守るために闘ってくれたというのに。
「怖かったな、ナノ。もう大丈夫だ」
私が恐怖のあまり現実逃避でもしていると思ったらしい。
グレイは私に温かい笑顔を見せ、手を取って立たせてくれた。
「とりあえず服を直そう。他の奴らがまた来ないよう、身を隠すか」
と、手近な部屋に私を導いてくれた。
……そういえば双子に露出プレイさせられる寸前でした。
今度会ったら、女性の扱いについて厳しくしつけないと。

クローバーの塔の客室には、大きなベッドがあった。
夜なので照明も抑え気味で薄暗い。
グレイは前を押さえる私をベッドに座らせ、
「俺は後ろを向いているから、服を整えてくれ。その後ですぐにナイトメア様の部屋に戻ろう」
「はい」
グレイが私に背を向けたので、私は安心して服のボタンを留め始めた。
――あれ?
お腹の方が少し変色しているように見えたので、少し服を広げる。
どうも憎きエースに転がされたとき、ぶつけたところらしい。
――他にも打ったところはありますかね。
私は逆に上着を脱いで身体を点検した。勢い良く転がされただけあって、かなりあちこちに打ち身のあとがあった。
――背中も少し痛い。打ってますかね?
「グレイ、ちょっといいですか?」
「ああ、終わったか、ナノ……っ!!」
振り返ったグレイが私を見て凍りつく。
私は上半身裸で、腕で胸を隠し、グレイを手招きした。
彼がいかに安心出来る男性かは、何度も助けられたことでわかりきっている。
「さっき打ったみたいなので背中を見て欲しいんです」
私がエースに転がされた経緯を話すと、グレイはすぐに了解してくれた。
騎士に激しく毒づきながら、私の背中を点検してくれた。
「気の毒に。何ヶ所か痣になっている。
関節は大丈夫か?ちょっと腕も動かしてみてくれ」
「はい」
まあグレイは背中を見ているから大丈夫か。
私は両腕を動かし、異常がないか確認する。
グレイはさらに細かく見て、ふと不思議そうに、
「ナノ、この肩の傷は何だ?小さいが鬱血している。他にも何ヶ所か似た傷があるな」
「ああ、それは前にブラッドにされたところですね」
「何……?」
グレイの声が低くなる。私は慌てた。
「い、いえ前にグレイに助けられたときなんですが。本番まではされてませんから」
「ナノ……俺が助けるあの前に、やはりブラッド=デュプレに何かされていたのか!?」
彼の声には激しい怒りがあった。私は大したことじゃないですと笑い、冗談めかして、
「えへへ。ちょっと抵抗出来なくて」

「ナノっ!!」

突然、怒鳴られた。
「え?」
視界が反転する。

気がつくと、私は上半身を全く隠せない状態でベッドに押し倒されていた。

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