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■はた迷惑な争奪戦・3

勝負はあまりにもアッサリついた。
斧をちらつかされたピアスは脱兎のごとく駆け去ってしまったからだ。
「久しぶりですね。ディー、ダム」
仕方なく、私は大きくなった双子を見上げる。
この間はブラッドと……その……ええと、アレの後ですぐお茶会に入ってしまったので、あいさつ程度にしか話さなかった。すると二人は、
「ひどいよ、ひどいよ。せっかく大きくなったのに、お姉さんはボスしか見てないんだもの」
「せっかく会合に合わせて大人になったのに。他の奴はともかくお姉さんに無視されるとショックだよね」
言っていることは小さかったときとあまり変わらない。
「ごめんごめん、二人とも大人っぽくて格好良くなりましたよ」
あわてて二人を褒めると、二人はまじまじと私を見る。
「お姉さん……」
「はい?」
「何だか小さくなった?小さくて、すごく可愛い」
そう言ってダムが身をかがめて私の髪に触れる。何だかくすぐったい。
ディーも胸のあたりに触れてくる。でもブラッドと違っていやらしさは全く無いのであまり気にならない。
――……て、気にするべきな気が……。
そしてなぜブラッドを連想するか自分。
一人ツッコミしつつ内心悶えていると、
「ねえ兄弟。お姉さんをボスのところに連れて行く前に、もう少し触ってみない?」
「ボスだってお姉さんをたくさん触ったんだもんね。僕らが触ったっていいよね」
「いえよくありませんよ」
どういう理屈だと問い返す前にディーが私の襟元に手を忍ばせる。
「!」
直接肌に触れられ、私は少し強ばった。
さすがにそろそろイエローカードだ。けど、
「うわ、今のお姉さんの顔、すごく可愛い!」
「兄弟。これはもっと触ってほしいっていう顔だよね」
そんな顔がどこにあるか。
けれど、双子は私の服に触れだした。
「ちょっと!二人とも止めてください!!」
声を上げて抗議する。誰も通っていないとはいえ、廊下で……というかそれ以前の問題か。
「お姉さん、あんまり暴れないでよ、怪我しちゃうよ」
ダムが後ろから私を羽交い締めする。ディーが前に立って私の服を緩めながら、
「これは嫌よ嫌よも好きのうちってやつだよ兄弟。お姉さんは『ホンネトタテマエ』の人らしいから」
「いえ、違いますから、用法としてもすっごく違いますから!!」
小さいときならゴツンと頭を殴ってやるところだけど今は二人とも大人だ。
力ではかなわない。
「お姉さん、可愛い。弱々しくて本当にすごく可愛い」
「もっと可愛くしてあげるからね」
ディーが服の前に手をかけ、完全にはだけようとした。
私はほとんど涙目だった。
そのとき、
「ナノから離れろっ!!」
「うわっ!」
双子の力がわずかに弱まり、私は分からないまま全力で逃れた。
すると誰かが私の手首を取って引き寄せてくれる。
私は顔を輝かせて彼の名前を呼んだ。

「グレイ!」


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