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■ブラッドの新しい女性・前

……ともかくブラッドの女性遍歴はさまざまで、上記のように屋敷に出入りする
お気に入りの他、ブラッドの方から会いに行く美女もかなりいたらしい。
部屋に出入り出来る女性は、ブラッドの女の中でも最上位だけというわけだ。
その最新の女性と別れたということは……
「なら、今度あなたのお部屋に出入りする栄誉を与えられた美女はどなたです?」
私はわくわくして言う。
最新の特ダネがいち早く分かるかもしれないという興奮にウズウズしていた。
早く噂好きの使用人さんたちに触れ回り……コホン、情報を共有したいものだ。
「知りたいかね?」
ブラッドはニヤニヤと言い、私は勢い良くうんうんとうなずく。
「なら、どんな女だと思う?」
逆に聞き返され、私はうなる。
部屋に出入りさせる女なら、すでに屋敷に姿を見せているはずだ。
この間、交渉で屋敷に来ていたスレンダーな小麦肌のモデル嬢か。
ティーパーティーでブラッドと、難しい話をしていた眼鏡の似合う才媛か。
いやいやドラマチックに、一度だけ見た、敵対勢力の深窓のご令嬢かも。
けれど、ここ最近の傾向を見るに、「その女性はあなたを振り回す人でしょう」
「そのとおり! 彼女に私は大いに振り回されているよ」
ブラッドは紅茶を飲みながら笑ってうなずいた。
そしてさらに私を抱き寄せる。
それにしても密着しすぎだ。
少し離れようとしたけれどブラッドは腕を緩めてくれない。
のろけがよほど楽しいのだろうか。
しかし振り回す人か。
才媛とご令嬢はそんなタイプではないし、モデル嬢も控えめな感じだった。じゃあ誰だろう。でも、
「間違いなく美女ですね」
「そうとも。私は彼女の美しさから目を離せないでいる」
言いながら、私の髪に触れる。
そろそろセクハラと訴えるべきだろうか。
ただ異文化圏だとキスも日常あいさつだったりするから、どのタイミングで言うべきか距離の取り方が分からない。
「あとは……胸は大きいですよね」
小悪魔嬢は例外として、夜の蝶夫人も金髪毛皮、その他の女性も大変に豊かな胸をしていたものだ。
男というのはそういうのが好きらしい。
するとブラッドは少し宙を仰ぎ、
「いや……まあ、残念ながらそちらはな。
だがまだ可能性はあるようだし、今後に期待しているよ」
なぜ私に片目をつぶる。
それは何か。
私の胸のことにも同時に言っているのか。
宣戦布告と見なすぞコラ。
「性格はどうなんですか?」
すると楽しそうに、
「猫に似ているな。
機嫌がいいと思って、ちょっかいをかけたら爪を立てることもある。
のんびり寝てばかりいると目を離していたら、突然飛び出していってしまう。
だが庭で正座をして、呑気に茶を飲んでいる姿は実に可愛らしいものだ」
「お茶がお好きなんですか!」
しかも緑茶派!!
それは好感度急上昇だ。
あわよくばお友達になれるかもしれない。
私の胸は期待に輝いた。

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