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■療養inエリオットの部屋・中

あのときエリオットはブラッドに謝り倒し、なぜか元凶の私にまで謝ってきた。

『すまねえ……俺があんなもの買ってやらなかったら。
あんたが屋敷で退屈して双子と遊びたいのかと思ってたんだ……』
爆発物のことらしい。
マフィアをやっていて感覚の少々ズレているエリオットは、私が双子と遊びたくて爆発物を所望したと思っていたようだ。

そうしたら私がハートの城に乗り込んだから、ずいぶん責任を感じたようだった。
エースに会ったと知ったときなど、エリオットだけでなく、説明を聞いていたブラッドまでが一瞬言葉を失ったものだ。
ハートの彼は笑顔の爽やかな人だったけど、どうもいろんな勢力に一目置かれているらしい。

しかしまあ、普段が普段(らしい)なので私はナンバー2の厳重注意で終わった。
そして当のナンバー2は客に爆発物を与え、危険行為を幇助したとして自ら謹慎を申し出、ブラッドの了解を得た。
じっと座っていられない性分だろうに耐えて自室やブラッドの部屋で書き物をしたり部下に指示したりしている。

私は、手厚い処置が施されたものの、銃の傷が元で高熱を出した。
エリオットはブラッドに懇願して、私を自室に引き取り、謹慎ということもあって、つきっきりで看病してくれた。
私はエリオットの手厚い世話もあって経過は順調だった。

以上が、ここ最近の時間帯に起こったこと。
で、私はエリオットのベッドで眠っている。

やがて、私があまり眠くならないうちに、エリオットがあくびをするのが聞こえた。
「俺もそろそろ寝るか……」
立ち上がって伸びをする気配。
見なくても、マフラーやコートを取る音が分かる。
そうしてこちらに歩いてきて、
「よっと」
真横に大きな身体が沈み、スプリングが鳴る。
目を開けると、エリオットがこちらをのぞきこんでいた。
シャツとスラックスで、いかにも仮眠という感じだ。

――何で、一緒に寝るんでしょうか……。

エリオットは当たり前の顔で、私に体を寄せると額に大きな手を当て、
「熱も上がってねえな。よしよし。じゃあ寝ようぜ」
と私を抱き寄せた。
ちなみに、私は死ぬほど似合わないことにネグリジェだったりする。
腕に怪我をしているため、いつものパジャマだと脱ぎ着が非常に辛い。
顔に出さないようにしていたのに、私が痛がりつつ着替えていることを悟った
エリオットがすぐにネグリジェを取り寄せ、以降はそれで生活している。
――療養生活をネグリジェってどうなんでしょう。
違う気がする。恐ろしく違う気がする。
腕を怪我してネグリジェにされた人なんて聞いたことがない。

それとサイズを言った覚えがなかったのに、サイズぴったりだったのはなぜだ。

「やっぱこの服だと肩が冷たいよなあ」
エリオットがなでなでと私の肩をなでた。
でも全くいやらしさはない。
そもそも私を異性と見ていたらベッドに入ってこないだろう。
私も何となく、いつもの習慣からエリオットのウサギ耳にさわさわと触れる。
猫みたいに耳がぴくっと逃げるのが楽しい。
「おい、止めろよ。ナノ。くすぐったいぜ」
笑う声。でも少し嬉しそう。
私も微笑んで、無言でなでつづける。
エリオットは私がもっと触れるようにと頭を下げながら、
「あんた、何でベッドの中では無口なんだ?」
お返しにとばかりに私の頭を撫でながらエリオットは言った。
私は答えず、もっと耳を触る。
ベッドの中でくすくす笑いながらウサギ耳と黒髪に触れ続ける私たちは、兄妹のようだった。

――それはそれとして『ベッドの中では』とか『ベッドの中で』とつけるだけで響きが
いかがわしくなる気がするのは、私の心が汚れているせいでしょうか……。

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