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■時計屋・下

※R18

「これだから女は……全く、慎みがない……」
ベッドに上がったというのに、ユリウスは未だにグチグチ言っている。
私がユリウスを脱がせようとすると嫌がって手をはらう。
「だから、ナノ、こんな真似をするのは……」
「いいからいいから。だって私は部下ですから」
ユリウスが動かないので、先に自分の服を脱いでいく。
「お、おい!ナノっ!!」
ああ、効率的。慌てふためくサマが快感。
「お、おまえという女は!だいたいおまえは貞操観というものを……」
「はいはい。××でも××××でも×××でも呼んで下さい」
――卑怯ですよねユリウス。
私は下着に手をかけながら時計屋を睨む。
こちらから迫るんだから、ユリウスの責任になんて出来やしない。
もう、こちらも割り切って××を演じるしかない。
まあ最近は本当に軽くなった気がするし。後悔は後でしよう。
「ユリウス、好きです……」
羞恥心を服ごと脱ぎ去ると、服をさっさと下に放る。
「ナノ……っ!」
勢いに任せて押し倒し、自分から舌を入れて、ユリウスのそれに絡める。
「ん……ん……」
ユリウスの重い手をつかんで、はだけた自分の胸に押し当てる。
すると、身体の下でビクッと震えるものがある。
けれど戸惑いがあるのか、未だに震えて動こうとしない。
――何か、本当に自分がユリウスに犯罪行為をしようとしている気分に……。
なので、怯えた顔に何度もキスをして緊張を緩めてやり、彼の上着を緩めた。
「ん……」
ようやくユリウスも反応してきた。胸を下で舐めてやると、身体が熱くなり、下が
かすかに反応する。
「ほら、ユリウスだって、その気になってきてるじゃないですか」
ズボンの上から何度もさすってやると、明らかに反応して起ちあがってくる。
――ていうか、最後まで私がリードする流れ?
さすがに恥ずかしいというか疲れる。
でもユリウス自身を何度もさすり、刺激していると、
「おまえは……私を恨んでいないのか……?」
真っ赤になりながらユリウスが私に言った。
「え?何でです?」
「夏祭りで、エースとひどいことを……監獄でも……だから……」
「許せないですよ」
「…………」
まあ、あれを許すのはさすがに馬鹿だと思う。現にエースは未だに許せない。
「今も、たまにうなされてナイトメアのお世話になってるんですから」
「…………」
急速に落ち込むユリウスに、笑ってやる。
「だから、ちゃんとやり直してくださいね」
野外の××だの監獄の床だの、そういう特殊なのが思い出というのは激しく嫌だ。
すると、されるがままになっていたユリウスが言った。
「……分かった」
「……わっ!」
動きが素早すぎて反応が遅れた。
折れるかというほど下から強く抱きしめられた。コートの袖が裸の背にこすれる。
「努力は、する」
「ん……」
今度はユリウスから唇を重ねられ、口内に舌をねじこまれた。
私も抵抗せずに応じた。

月明かりが作業場の窓から忍び込む。
一人用のロフトベッドがギシギシと揺れ、私たちは絡み合っていた。
「ん……やあ……」
「……ん……」
「ユリウス……くすぐった……や……」
力なく彼の頭を押し戻そうとするけれど、足をしっかり押さえられていては動ける
はずがない。割れ目に潜りこむ舌が生き物のように、上から下まで這い回り、気持ち
良くて頭がどうかなりそうだった。
「ん……!…やあ……っ!」
一番大事な箇所に歯を立てられ、甘い声が漏れる。
奥からとろりと愛液が湧き出、すぐにそれをユリウスが舌ですくう。
「ユリウス…すごく、きもちい……あ、だめ……いじわる……」
からかうように指まで差し入れられ、その刺激だけでイキそうになった。
「ほんとに、だめ……ああ……や……」
「ん……」
必死の頼みが通じたのか、糸を引いてユリウスが顔を離す。
裸の腕で軽く口をぬぐい、私に覆いかぶさると、舌で胸を愛撫する。
「や……ん……」
その間も下には手の刺激が続く。時計屋と言う職業柄……かどうかは謎だけど、
本当に指がしなやかに動き、なぜだかこちらの気持ちいい部分を的確に責める。
私はシーツをつかみながら懇願する。
「ユリウス、ほんとに、イっちゃう……おねがい……」
涙目で見ると、フッとユリウスが笑う。
「そんなに待てないのか。仕方のない奴だな」
笑って私にキスをすると、裸の上半身を起こし、ズボンのベルトに手をかけた。
――うう……こっちからリードしなきゃ動かなかったくせに……。
負け惜しみに思う。
とはいえ快楽を人質に取られて、憎まれ口を叩けるはずもなく、彼が前を緩めるのを
息を乱しながら待っているしかない。
やがてユリウスが、生温く濡れたそれをゆっくりとこちらに押し当てる。
期待に下がゾクリと震えた。
「行くぞ」
「早く……もう、がまん、できない……です……」
押し当てられる感触だけで蜜が湧き出る。
「ん……」
「や……ああ……あああ……っ!」
瞬間、深く押し入られ、押さえられない声が部屋に響く。
「ナノ……」
あられもなく声をあげて動き始めるユリウスの首にすがりつく。
「ナノ……ナノ……!」
「ユリウス、きもちいい……もっと……」
開始される抽送に、こちらの腰もすぐに動き、彼を奥へと誘い出す。
「い……ああ……ああん……いい……」
「ナノ、好きだ……おまえが……好きだ……」
おかしくなるほど激しく責め立てられ、愛液がシーツに染みを広げていく。
「ユリウス……もっと……やあ……いっちゃう……」
ユリウスは私を抱きしめ、責め立てながら言う。

「愛している。離れても……会えなくなっても……ずっと…おまえだけを……」

気持ち良すぎて、彼が何を言っているのか頭に入らない。
「やん……は、ああ……いく……だめ……ユリウス……」
「ナノ……ナノ……っ」
もう互いに快楽を追うことしか考えていない。呼び合い、舌を絡め、抱きしめた。
「ユリウス……あ……ああっ……やああ……っ」
強く抱きしめられ、彼の腕の中で私は声をあげて達した。
直後に、ユリウスがゆっくりと私の中から出る。
「はあ……はあ……」
ベッドに用意した懐紙に手を伸ばすけど、間に合わなかったらしい。
「く……」
そして私の下半身に感じる生温かい感覚。
『しまった』という顔をして、慌てて懐紙で私の身体を拭く仕草が可愛い。
私も少しずつ息を整えて笑い、ユリウスが横になるのを待つ。
「ユリウス、大好きですよ」
彼の長い髪をすき、汗ばんだ身体に手を伸ばす。
「……私もだ……」

恋人でさえない私たちは、抱きしめあい、長いキスを交わした。

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