続き→ トップへ 小説目次へ ■ブラッドとのお茶会とお仕事探し そして時間帯がゆっくりと夜に変わった。 私のお茶会は昼開催と決めているから、これでお開きだ。 「楽しいお茶会でしたね」 お開きの言葉を口にすると、エリオットたちは立ち上がって伸びをした。 「ブラッドのお茶会もいいけど、ナノのお茶会も俺は好きだぜ。 絶対にまた呼んでくれよ」 「ねえお姉さん、緑茶って本当に砂糖とかミルク入れちゃいけないの? あんな苦いの何で美味しそうに飲めるんだろう……」 「紅茶とは違うんだ。ルールがお硬いよね、オリエンタルの神秘だね〜」 よく分からないことを三者三様に言って、エリオットたちは仕事に戻っていった。 さて、と私が立ち上がり、茶器やシートを片付けようとすると、 「ナノ様、いいですよ、私たちがやりますから〜」 「そうですよ。お嬢様はお部屋でのんびりなさっていてください〜」 使用人さんたちが来て、てきぱきと片付けだした。 あまりの手際の良さに手伝うこともなく、私は玉露の袋(未だにもったいなくて飲んでいない)を抱え、屋敷に戻った。 「はあ……」 廊下の途中、辺りに誰もいないことを確認して私はため息をついた。 働きもせずボケーッと茶を飲み、まったりする日々。 この歳でご隠居でもあるまいに。 実はメイドの仕事をしようかとブラッドに申し出たけれど『人手は足りている』『そんなことをしなくていい』と断られてしまった。 そういった立場にあぐらをかける剛の者ならいいけれど、私は神経が細い。 のんびりするにも身の置き所がなくてはのんびりしようがない。 いっそ屋敷にはたまに遊びに行くだけにして、外に出ようかと思ったこともある。 でも、出られなかった。 なぜかは分からない。 でも出られないと表現する他ない。 とにかく私は門から一歩も出られなかった。 横をすれ違い、楽々と外に出て行く使用人さんやブラッドたちに私は複雑な顔であいさつをするしかなかった。 彼らはなぜか笑いをこらえるような顔で、あいさつを返してくれた。 真相は未だに分からず、とにかくなぜだか出られないでいる。 「ああ、いた、お嬢様〜」 鬱々としながら部屋に向かっていると、使用人さんに呼び止められた。 「ボスがお茶会にお呼びです。いらしてください〜」 「はい」 私は微笑む。退屈嫌いのボスの話し相手になり、無聊を慰めることもお仕事の一つだ。 ――でも、カフェイン中毒にはなっていそうですね。 昼も夜も飲みまくりな私であった。 2/5 続き→ トップへ 小説目次へ |