続き→ トップへ 小説目次へ ■いつも笑顔で・中 「芋虫か」 「……何だ」 「な、何だとはなんだ!!二人してその冷たい反応は!」 宙をふわふわ浮きながらナイトメアが抗議する。 けど私とブラッドは白けた声で、 「だ、だって状況的に場違いと言いますか」 「寿命を縮めたくなければとっとと帰れ。おまえの吐血で式用のスーツを汚されてはかなわんからな」 「つ、冷たい!帽子屋はともかくナノ、君まで!! 私は君を守ろうとしたのに!!仕事をしながら君のことを見ていたら。 君が帽子屋に言い寄られて困っているみたいだったから……」 「仕事をサボる口実を見つけて喜んで出て来たんでしょう? グレイを困らせないでお仕事しましょうよ」 「ナノ……ひ、ひどい」 しくしく泣き出すナイトメアをブラッドは冷たく見、 「そういうことだ。ナノはこれから私の妻になる。 邪魔をしないでもらおう」 するとナイトメアはキッと顔を上げ、 「そんなことはさせない!!ナノは塔の住人だ!!私が守る義務がある!!」 「ナイトメア……」 病弱な夢魔が勇気を出す姿にちょっとお姉さん的感動を覚えた。 「それに!ナノはいずれ、このクローバーの国の領主の、私の妻になるんだからな!」 「は?」 私は思わず言った。そしてそのとき、ナイトメアの横を何かがかすめた。 「っ!!」 一瞬ブラッドの力が緩み、私はそれを見逃さず、ナイトメアの元へ走る。 けれど隙を作ってくれたのはナイトメアではなかった。 そしてナイトメアの頬をかすめ、重いナイフが……私の店の壁に深々と刺さった。 あ、あの、簡素な作りなのでもう少し大事にしてほしいのですが。 そしてナイフを追うように駆けてきたのは、 「ナノ!ナイトメア様!」 グレイだった。グレイはまず上司に、 「ナイトメア様、ご無事ですか」 もちろんナイトメアは涙目で、グレイをにらむ。 「ぶ、無事なわけがあるか!お、おまえ、さっき私を狙っただろう!!」 「いいえ、そんなことはありません。なぜ私があなたを狙うのですか」 「嘘つけ!今『ふざけた事をぬかすからだろう』と考えただろう!!」 ぎゃあぎゃあわめき始めるナイトメアを無視し、グレイは私を庇うとブラッドに、 「お引き取り願おうか、帽子屋。そして二度とナノに手を出すな」 するとブラッドは私の腕を持ったまま、片手でマシンガンを構える。 「爬虫類がナノを好きにするなど反吐がでる。ナノはもらっていく」 しかしグレイはマシンガンを前に、一歩も退くことなくナイフを構える。 「貴様のその自信ごと叩き斬ってやる!!」 するとブラッドの背後から 「トカゲ!ブラッドと姐さんの結婚を邪魔するなら容赦しねえぞ!!」 「お姉さんには早く戻って来て欲しいんだから、もう斬るしかないね」 「うんうん。早く結婚式をしてもらうんだから」 ――やっぱりいましたか。 エリオットと、成長したバージョンのブラッディ・ツインズが走ってくる。 彼らは即座に臨戦態勢に入った。 けれどやはりグレイは退かない。全てを叩き斬る、という目だった。 「ナノ、塔に逃げていろ。俺が全て片づける!!」 「で、でも」 役持ち四人対グレイ一人。さすがに分が悪いのでは。 「あ、あの、ナノ。私も一応役持ちなんだが……」 後ろからおずおず言ってくるナイトメアはさておき。 私が去った瞬間に銃撃戦が始まりそうで、私は困ってしまった。そのとき、 「ナノ!ナノ!!僕のナノーっ!! もうすぐお店の開店でしょう!?会いに来ましたよ!!」 笑顔で走ってくる宰相殿。駆け寄るなり私を抱きしめ、 「ああ、愛しています、愛しています!!」 「ペーター……周りを見てくれませんか」 というか空気、読んでください、本当に。 6/7 続き→ トップへ 小説目次へ |