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■その後・エース編

※R18

森の奥深くで私は後悔する。
――ああ、もう油断しましたね。
早めに帰ろうとしたけれど、どうも見つかっていたらしく、こっそりと跡をつけられたようだ。
……気がついたときには、騎士に押し倒されていた。

「ナノ?もう外でやるのに慣れた?」
「慣れると思いますか?」
「思うね。だって、こんなにここが濡れてるじゃないか」
「…………」
真っ昼間の森の中で、下を取り去られ、コートを脱いだだけの騎士に責められている。
いかがわしいこと、この上ない。
「ん……あ……」
けど、出してはいけないと思うのに甘い声が漏れる。
肌は熱を持ち、下は騎士を拒むことなく締め付ける。
私の腰をつかみ、何度も揺さぶりながら赤い騎士は笑う。
「知ってる?森にノコノコ入る女の子は、食べられても仕方ないんだぜ?」
「でも、あなたは私に興味がないと思ってました」
正直、この騎士の乱入は意外だった。
ちょっかいをかけることはあったものの、私に関する愛憎劇にはほとんど関わってきていない人だ。
彼はひたすら、親友兼上司に一途であると勝手に思い込んで。
完全に油断していた。
けれど、私が店を開くようになってからしばらくして、彼との関係が始まった。
強要されているわけではない。私が自分から森のドアまでさ迷い出る。
……で、なぜだか高確率で騎士にいただかれる。
いただかれなくても旅に強引に同行させられ、一緒に崖から落ちたりする。
今となっては互いに互いを欲している歪んだ関係だ。
エースは正面から。私は後ろめたく裏切っている気分で。
「自分をオオカミとでも思ってるんですか?ご主人様がいない憂さ晴らしを私でしないでいただけません?」
「あはは。寂しい子犬を慰めてくれよ」
「子犬と言い張りますか、迷子の駄犬が」
冷たく返したけれど、エースは止めてくれない。
本当に迷惑な人だ。でもなぜか関係が切れない。
「あん……や……」
一度出しても収まらないのか、騎士は私の胸の前ボタンをちぎって開き、外気に晒された私の胸を愛撫する。私の足をさらに大きく開かせ、
「いいよな。森の中って。開放的な気分になるぜ」
「開放、しすぎなんですよ……ん……あなたは……」
先端の敏感な箇所を舌で舐められ、声が漏れる。
同時に手袋を取らない手で下を刺激され、ぐちゅりと梢に音が響く。
愛液と彼の白濁した液が混じり、草むらに飲み込まれていく。
耳をすますと遠くからドアの声が聞こえる。
もうユリウスの名を出してもエースは止まってくれない。
「またいつでもここにおいでよ。俺に罰を受けにさ」
「何であなたに罰を受けなければいけないんですか」

「でも、俺に襲われると分かって来るんだろう?
この国で居場所を持って、ユリウスを忘れていく罪悪感をどうにかしたくて」

「…………」
私は考えないようにする。快感に溺れようと、エースを抱き寄せ、唇を重ねる。
「ん……」
「…………」
音を立てて舌を絡めると、密着した騎士の下半身に反応を感じる。
彼はまだ元気なようだ。
「ナノ……」
彼は自分のモノを私に押し当てる。私も特に拒まない。
「……あ……ああ……っ!」
「……ナノ……っ」
快感で私は何もかも忘れる。押し込まれる灼熱に最奥が溶けそうに悦び、抑えきれない嬌声を上げ続ける。
のどかな木漏れ日に、愛し合っていない男女の声が響く。
正常ではないと分かっているのに、私は憑かれるようにドアの森に行き、エースに抱かれる。そしてユリウスを思い出す。
私は結局、エースと一緒にユリウスを待っているのかも知れない。
この危険な男の思惑通りに。

「あの、まだ続けるんですか?」
何度目かに達してもまだ終わらないエースにうんざりして声をかける。
もう二回は時間帯が変わった気がするんだけど。
と思っているうちに、時間帯が夜に変わった。
私の機嫌が急降下したことをエースも悟ったのだろう。
「そんなに怒らないでくれよ、ナノ。そうだ。お詫びにお金を払おうか?」
「……本当に刺したくなるから、早く離れてくれませんか?エース」
「あはは。テントを張るよ。俺が張るから君は休んでいていいぜ」
「いえ、帰ります」
けれど騎士は笑いながら私を離さない。笑いながら、拒絶を許さない力で私を抱く。
そしてすっかり濡れた手袋で私の胸をつかむ。
「ん……」
その感触とエースの息に身体が再び熱くなっていく。
「夜の森は本物の獣が出て危険だからね。女の子を一人で返すわけに行かないぜ」
「あ……あ……」
獣より危険な男が言う。テントを張る気配はない。
そして荒く吐息を吐きながらぼんやりと思う。

――多分、私がユリウスのことを忘れて誰かのものになったら、この人は私を……。

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