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■その後・グレイ編

※R15

その夜の時間帯のこと。
プレハブ小屋でのんびり玉露を飲んでいると、後ろから声をかけられた。
「ナノ」
私は振り向き、
「あ。グレイ。こんば……」
「…………」
最後まで言わせず、グレイは乱暴に私に口づけた。
「ん……」
強引に身体をかき抱かれ、引き寄せられる。
痛いくらいに彼の熱を感じ、煙草の臭いでむせてしまいそうだ。
そして唇を離し、今度は優しく抱きしめ直した。
そんなときは本当に心臓がドキドキする。
堅実な彼の手がゆっくりと私の背を伝い、次第に愛撫のものに変わっていくときは期待で胸が震える。
そして……心が少し黒く染まる。
「ナノ。泣かないでくれ」
「泣いてませんよ」
そう言うけれど、グレイは私の涙を舌ですくいとる。
「あまり眠れていないようだな」
言いながら、グレイの両腕が私を軽々と持ち上げ、テーブルに座らせた。
そして彼は私の服の前ボタンを外していく。
その顔が本当に辛そうで申し訳なくなる。
だから私の方から顔を近づけると、驚いたように目を開き、それから微笑んでキスしてくれた。
そうして彼はもう一度私の涙を舐めとりながら、
「俺のせいか?」
「いいえ」
私はあれだけ振り回して迷惑をかけた。なのにちゃっかり開店資金までねだる図々しさ。
見捨てて当然。責めて、罵って、殴ってもかまわないとさえ思う。
けれどグレイは私が何をしても許してくれる。
だから悲しい。だから彼を拒めない。拒まない。

空いたシャツの間からグレイの大きな手が入り、胸を愛撫する。
「……や……」
「また、あまり食べていないようだな。今度、一緒に食事に行こう。
いや何なら今からでも……」
ここまで来て、彼は中断にためらいがないようだった。
「ん……やだ……」
否定なのか甘えた声なのか、自分でも分からない。
ただ彼の体温が遠ざかるのが怖くて、彼の手を自分の胸に押しつける。
「離れないでください……お願い……」
するとグレイは優しく微笑み
「大丈夫だ。離れたりは……君を離したりはしない」
「ん……ん……」
飽きること無く舌を絡め合い、少し顔を離してはまたキスをする。
そうしていると、慣れた身体は自然に熱を帯び、大事な箇所が次第に潤ってくる。
「ん……っ」
ふいに彼の手が下の衣服の中に入り、下着の上から大事な箇所をまさぐる。
「やだ……グレ……だめ……」
「相変わらず敏感だな。まだはじめたばかりだぞ?」
「いじわる……しないで……あん……」
肩に手をやり、押しのけようとしても通じない。
それどころかさらに深くを刺激され、それでも下着の中には入らない。
あまりにもどかしくて、私はテーブルの上でじれったく身を揺すった。
「ナノ、どうしてほしい?」
からかうように言われ、欲望に流され、真っ赤になりながら
「ち、直接……って……」
「どこを?」
「…………」
言えるわけない。けれど沈黙していると急かすようにぐちゅぐちゅと弄られ、下着どころか服にまで染みが広がってくる。
もうそれだけてイッてしまいそうで、限界だった。
「…………を触って……」
顔をこれ以上にないくらい真っ赤にし、それだけやっと言い切った。
けれどグレイは起き上がる。
「ダメだな」
「え?」
一体これ以上、何を強要されるのかと警戒していると、グレイはコートを脱いだ。
「宿に予約をとってある。そこに行って、終わった後に食事も一緒に取ろう」
「ち、ちょっとグレイ!それなら最初から……!」
というかこんな状態にされて外に出ろと。服にはもううっすらと染みが出来てるのに。
けれどグレイは私にコートをかけ、私の手を引いてテーブルから下ろす。
そしてよろめいた私の腰を抱いて支えた。
「夜の時間帯だし、俺のコートをかけていればバレはしないさ」
寒いわけではないのに男物のコートを着た女性。
何というか……バレはしないだろうけどそれはそれで目立つ。
妙な勘ぐりを受けはしないかと心配になってくるのは私が汚れているからでしょうか。
「クローバーの塔には及ばないが、夜景のきれいな部屋を取ってある。さあ、行こう」
「…………」
最初の時点で外食を誘われていたら多分断っていた。
あんまりそういう気遣いをされたくないから。
――まさか、私に断らせないために……。
彼が基本的に爬虫類だとか、昔は遊んでいたとか、そういったことが嵐のように脳内を駆け巡る。
でも笑顔で私の手を引くグレイは親切そのものの。いつもの顔だった。
――しかも行く途中も何か悪さをされそうですね……。
それは確信に近い。
今のグレイはとてもそうは見えない誠実な人だ。
でも……意外と物陰に引きずりこむような真似をする。
――まともな人だったから、あんまりこっち方向に目覚めないでほしいんですが。
それとも私の前で装って、押し殺していたものが、少しずつ表に出てきているとか……考えたくもない。
「馬鹿……」
彼に従いながら、私は大人しく歩く。
足の間に、透明な液がこぼれ落ちた。

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