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■グレイの嫉妬・下

※R15

厨房に月明かりが差し込んでいる。
また月明かりだ。
夜の時間帯は嫌な事が多い。
そこには、この間の時間帯のような苦悩の雰囲気はみじんもなかった。
グレイはよく分からない妙な怒り方をして。私は侮辱を受けて。
何でこんなことになったのか分からない。
けれど私たちは初めてとも言える喧嘩をしていた。
けれど、荒事に慣れた男性のグレイと、お茶を飲んでのんびり過ごしていた自分。
始める前から勝負はわかりきっていた。

「グレイ、離して……!!」
他ならぬグレイが。どうしてブラッドのようなことを言うのか。
勝手に紅茶を淹れたり塔を出たり、ブラッドに紅茶をもらったこと自体は確かに怒られて当然だ。
私のために会合で尽力し、規律を守る補佐官として怒りは正当なものだ。
でも叱るならナイトメアのように普通に説教すればいい。
それが今までのグレイだったはずだ。
それなのになんでこんな妙な怒り方をするのか。
けれど私がいくら怒っても、口汚く罵ってもグレイは冷笑するだけで。
暴れる私を易々と押さえ込み、身体に触れてくる。
「……っ!」
その強さに抵抗を一瞬忘れてうめく。
その隙を見逃さず、グレイは下から、上着の中に手を差し入れてきた。
「グレイ……っ」
服の上からでも手を押さえ、何とか止めようとした。
けれど抵抗にもなっていないと言ったように、さっさと上に進み……胸を覆う布地の下に潜り込む。
「……だめ……っ」
「何がダメだ。この間は許したし、その後も俺を誘っただろう」
酷薄に言われ、言葉を失う。グレイは直に胸を愛撫し、こちらの痛みに構わず力をこめてくる。
この前とまるで逆だ。
私も必死になってもがいたけれど、体力差は歴然としている。すぐに疲れ、
「はあ……はあ……」
「もう抵抗はおしまいか?なら後は好きにさせてもらう」
さして時間も経たず私が抵抗に疲れると、グレイは遠慮無く、私の下の衣服に手をかけた。

「ん……や……」
下の服を下着ごと膝まで引きずり下ろされ、隠す物のなくなった茂みにグレイの手が分け入る。
「もっと声を出せ」
低い声が命令し、仕方なくそれに従う。
「あ……ん……やあっ」
茂みの奥に手を入れられ、中をまさぐられると、じわりと愛液があふれる。
ぐちゅぐちゅとかきまわされ、自分のものとは思えない嬌声が喉から漏れた。
それにこの前とは違い、今は明かりがあり、恥部がグレイの目に晒されている。
恥ずかしくて仕方ない。
「あ……やだ……あ……」
愛液のあふれる場に容赦なく指を突き入れるグレイ。
怒りもなりを潜め、抵抗する体力も切れた私は、グレイの良いようにされていた。
「いじめられる方が好きだと言ったな。なら、ここはこの方がいいか?」
「ん……やだ……意地悪……っ」
最も敏感な一点を潰されそうなくらい乱暴に弄られ、痛みと快感に声が出る。
「まだこれからだぞ。ナノ。そんな声を出して、はしたない……」
私の抵抗を止め大人しくなったこともあり、グレイも怒りが収まってきたようだ。

――これはこれでいいの……ですかね?
快感に浮かされながら、私は少し思う。
何度も繰り返すけれど、私はグレイが好きで、グレイの好意を嬉しいと思う。
出来れば彼に恋したい。けれど出来ないでいる。
だから身体の関係からでもいいかと、ある意味アレな境地に達していて、実際に誘ったこともあったのだ。
「ん……ぁ……」
私とグレイは厨房の床で絡み合っている。
空気は少しずつ変わり、私たちは互いを求めていた。
グレイは愛液に濡れた手で私の胸をもみしだき、そして耳元でささやく。

「本当に俺の女になるか?ナノ」

「え……いえ、その……」
はい、と言うべきなのだろうけど、いざその場になると言葉が出ないのが悪女になりきれない小娘の悲しさか。
「君の心が時計屋にあろうとも。君が求めてくれるのなら男として答えよう。
だが、そうなれば、もう時計塔には戻れないと思った方がいい」
私の動きが一瞬止まるけど、それでも答える。
「ユリウスは家主です。私は誰のことも好きになっていません」
……グレイの事も。
でもややこしいものを伴わない身体の関係なんて掃いて捨てるほどある。
グレイは私を抱き寄せ自虐的に笑う。
「君はひどい人だ。いつもあんなに優しい笑顔をふりまいておきながら」
……なんか否定出来なくなってきた。
もしかして本当に悪女なんでしょうか、自分。
「……んっ!」
悪戯するように、下の谷間の部分をぐりぐりと弄られ、軽くつねられ、思わず感じて声が出る。
グレイの指にさらに愛液が溢れ、とろりと指の隙間からこぼれた。
私に意地悪な仕返しをしたグレイはくつくつと笑う。けれど
「俺は君が好きだ。君に惚れてもらえるよう、大事にするよ。ナノ」
「……グレイ。私もあなたを好きになるように……」
最後まで言う前に口づけされた。私も答え、彼の首に腕を回す。
身体がさらに熱くなり、私は潤んだ瞳で、グレイを見上げた。
彼も微笑み、自分のズボンに手を伸ばそうとし、

……そのとき時間帯が変わって昼になった。

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