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■塔の夜・下

※R15

グレイの息が荒い。
耐えきれないように手が私の下半身に伸び、薄布の隙間から中に忍び込む。
「ん……っ」
大きな手が、遠慮会釈なく茂みの奥に割り込み、私の湿りはじめた箇所に手荒く侵入していく。
「ん……あ……」
生理的な快感に、私はわずかに声を出す。
恐怖はある。止めて欲しいと懇願したりはしない。
怯えを深くに押し殺し、その代わりにグレイの手が入りやすいように足を開く。
グレイは私が泣き叫んで抵抗すると思っていたのだろう。
逆の反応に戸惑っているようだった。
「ナノ……」
「い、いいです、グレイの好きにして下さい」
どうせ私の身体なんて汚れてる。最奥を汚されていないだけで似たようなものだ。
「ナノ。俺は……」
「もっと痛くしても大丈夫ですから。あ、あはは。私ちょっと苛められるの好きみたいで」
声がうわずっている。冷たい汗が流れる。
こんな自分はまともじゃない。でも実際にまともな状況ではない。
私は馬鹿みたいに明るくグレイに笑う。でも目は笑っているかどうか。
「……くっ」
まるでグレイの方が痛みをこらえるように眉根を寄せ、何かを振り払うように両手で私の下の服を下ろしていく。
私は腰を少し上げてそれを手伝った。

服を全て剥がされたせいか身体が冷たい。
でも、誰かのときのような温かいベッドではないとはいえ、別の誰かのときのような野外ではない。
私は起き上がって腕を伸ばし、コートを脱いでシャツのボタンを数個外しただけのグレイにキスをねだる。グレイも応じてくれる。
私はグレイの足の間に座った状態で、彼を抱きしめ、舌を存分に絡めた。
「ん……」
艶めいた声が喉から出る。
グレイの手が私の背後に回り、後ろから愛液のあふれる場所を刺激した。
「ん……やだ……」
そう言いつつも、私の身体は快楽を求め、腰を浮かして足を開いてしまう。
グレイの手が深くに潜り、ぐちゅっという卑猥な音がする。
あふれた蜜が腿をつたうのを感じ、身体がさらに熱くなっていく。
「グレイ……もっと……」
あまり気持ち良くて物足らず、自分から腰を上下させ、指を奥へと誘う。
もうこれだけでイってしまいそうだ。
「ナノ。まだ早い。そんなに焦らないでくれ」
グレイが指を離す。私は物足りなくて自分からグレイの手を取り、前に押しつけた。
「いやらしい子だな。好きでもない男にここまで乱れた顔を見せるなんて」
「そんなこと、いわないで……あ……」
別の手が私の背を抱き寄せ、前の、もっとも敏感な部分を親指の腹で強く擦られ背がのけぞる。
他の指が再び奥に差し入れられ、さらにあふれる愛液が床に卑猥な染みを広げていく。
そしてグレイの舌は私の胸を絶えず愛撫し……もう限界だった。
「グレイ……私、グレイが、欲しいです」
息を荒くし、休みなく腰を動かしながら、私はみっともなく哀願する。
もう一つになるのに何の障害もない。

けれどグレイは首を振った。

「ナノ。止めよう。こんな風につながるのは、正しいことではない」
私はショックを受けた。男の側からそう言われるなんて。
自分はそんなに女としての魅力がないんだろうか。
顔に出たのだろうか。今までで一番強い力でグレイに抱き寄せられた。
「ん……」
「俺だって、俺だって……君の事が……っ!」
乱暴に唇を塞がれ、舌が私の舌を追い、絡みつく。
「……は……」
耐えきれず、前部分をグレイの服に擦りつけ、彼の服に染みを作る。
「私、グレイが好きです。だから好きにしていいんですよ?」
かすれる声でそう言うと、
「なら何で君はずっと震え、泣いているんだ?」
「…………」
エースもブラッドも、私が泣こうが、震えようが頓着しなかった。
むしろそれに煽られているようだった。
でもグレイは私が泣こうと止める気はないと言っておきながら、それが原因で乗れないらしい。
私は何とかグレイをその気にさせようと必死だった。
身体を離し彼のズボンに手をかけようとし、止められた。
「ナノ。そんなことをしなくていい。いいんだ」
優しい声だった。何が原因なのかは分からない。
でも一時の激情はもう彼の中で完全に去ったらしい。
残されたのは半端に熱を上げさせられた自分。
私は必死だった。本当に必死で言った。
「グレイ、私ならいいんです。あなたが本気になったら、どうせ力ではかなわないし、
ブラッドにはもっとひどいことを、たくさんされているんです。
あなたに嫌われてここを追い出されたら、もう……」
ハッとした。グレイもわずかに表情を硬くしている。
それはそうだ。
打算で抱かれてやると明言してしまったのだから。
もう一度彼を見ると、初めて見るような、切ない、澄んだ瞳をしていた。
「グレイ……」
激昂して私を痛めつけるだろうか。彼はエースと競り合う実力の持ち主だ。
普通に殴られれば骨の数本は軽く折れる。けれどグレイは
「そう怯えないでくれ。ひどいことをしたのは俺の方なんだ。
さんざん傷つけられた君に、さらに深い傷を刻みつけた」
そして抱きしめる。
「異世界に来て記憶喪失になり、寄る辺なく一人で。
ずっと辛かったな、ナノ」
なぜだろう。目の奥が熱い。
恐怖とは別の意味で、泣きたくて仕方がない。
けれど新たな涙をこぼす前に、グレイの手が再び私の敏感な箇所に伸びた。
「ぐ、グレイ?」
静まりかけた熱が再び燃えさかる。
けれどグレイは自虐的に笑った。
「このまま終わるのは辛いだろう。任せてくれ」
グレイが私一人だけを行かせようとしていることに気づき、私は激しく首を振る。
けれど押さえつけられ、大きく足を開かされ、さっきより激しく内をかき乱される。
「や、やだ! グレイも、一緒に……」
「……最低な俺を見ないでくれ、ナノ」
ふいに視界を覆われる。彼のネクタイで視界を塞がれたのだとすぐ分かった。
けれどそれを取る前に姿勢を変えさせられ、うつぶせにされる。
「あ……いやあ……っ」
腰を上げさせられ、背後から刺激される。
視界が塞がれ、感覚が敏感になった上、動物のような姿勢にさせられ、グレイに後ろ
から見られていることに熱が限界まで高まる。
自分一人だけが熱くなっていると分かっていて、それさえ興奮を高める材料になる。
「グレイ……グレイ、だめです……」
「ナノ……」
彼はひたすら私に快楽を味わわせることに集中している。
指がこすれるたびにぐちゅぐちゅと淫猥な音が響く。
私は声を上げ、腰を動かしながら、恥も貞淑も捨て、何度もグレイを誘う。
来て欲しい、忘れさせてほしい、一つになりたいと。
でもグレイはいっそ冷淡なほどに無視し、私の感じる箇所を乱暴に弄ぶ。
もう床にこぼれる愛液は水たまりをつくるかというほどだった。
そしてグレイはさらに背にのしかかり、胸をまさぐり、何度も私の名を呼ぶ。
後ろに感じるグレイの……はこれ以上にないくらい反応しているのに。
「ナノ、愛している……」

そして一際強く刺激され、声を上げ果てるとき。
その瞬間まで、私は泣いてグレイを求めていた。

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