続き→ トップへ 小説目次へ ■夜 ※R15 私はソファに横たわり、ぼんやりと窓の外の夜景を見ている。 ここはクローバーの塔と言うらしい。けれど、よく分からない。 でもそのうちゴロゴロするのにも疲れ、チラッと部屋の主に視線をやる。 帽子を脱いだ彼は、見たところ机で書き物に集中しているように見えた。 ――……よし。 私は音を立てないようにそっと起き上がり、じりじりと部屋を移動した。そして扉に手をかけようとして、 「どこへ行く。お嬢さん」 「!!」 声をかけられ、ビクッと止まる。 「何度言っても分からないようだな。さあ、来なさい。罰をあげよう」 それは命令だった。 私は嫌々歩く。けれど彼のかたわらに行くや一気に手を引かれ、膝の上に乗せられた。 「ん……」 髪に手を回され、私の意思を無視して唇を重ねられる。 入り込む舌にゾッとするけれど、逆らっても助けはない。 音をたてて私の舌を吸いながら、ブラッドの手が私の背をつたい、別の手が服の上から胸に触れる。 怖くて身体が震えた。 そんな私を、ブラッドは楽しそうに見て、さらに深く唇を重ねた。 私がもっとも怖がっていたマフィアという存在。 その中でも最大の帽子屋ファミリー。 それを統べるボス、 ブラッド=デュプレ。 夕暮れの川で彼に発見された私は、クローバーの塔という場所の、彼の滞在する部屋に連れて行かれた。 それからずっと彼の部屋に監禁されている。 ブラッドの手が私の服の中に潜り込む。 そして素肌に残るいくつかの包帯に触れ、 「もう少しだな」 と満足そうに言う。私の回復が近いのを喜んでくれている……だけではない。 「私の敵がつけた傷が消えたら、今度こそ君が手に入るな、お嬢さん」 幸いエースと違い、彼に傷だらけの私を抱く趣味はなかった。 なかったけれど……。 ブラッドは胸を覆う布に手を忍ばせ、私の胸に直接触れた。 「……やめて、やめて……」 エース以上の嫌悪に首を振る。でもブラッドは止めない。 形を確かめ、強く揉みしだき、先端を指でくすぐる。 私の目に涙が浮かんで、それが軽い嗚咽になっても変わらない。 マフィアなんて本当に怖くて最低だ。ブラッドはそんな私を見、 「記憶を失う前も後も、君は変わらないな。ずっとマフィアを嫌い続けている」 だが、と今度は服を首もとまでまくる。誰もいないとはいえ、肌が直接外気に晒され、私は羞恥で真っ赤になった。 「元気のない君も可愛いものだ……嗜虐心を刺激される」 「……っ!」 ブラッドの舌が、私の胸に触れる。 「ゃ……!」 彼は飽きる事無く胸を舌で弄び、私は恐怖に声も出ない。 それでも手を出されないのがまだ救いかもしれない。 でも……タイムリミットはそこまで来ている。 「ん…だめ……やめて……」 「ほら、いい子だからもっと足を開きなさい」 暗闇のベッドの中で、ブラッドが私にのしかかる。 決してつながることはない。でも、されるのはほとんどそれと変わりないことだ。 ブラッドは力ずくで、全裸の私の足を大きく開かせ、そこに顔をうずめる。 舌が最も触れられたくない場所に深くねじ込まれ、音を立てて荒らしていく。 怖くて恥ずかしくて、泣き声が私の口からもれた。 「君がずっと記憶喪失でいるのも悪くないな……」 わざと音を立てて蜜をたっぷりすくい取り、顔を上げてマフィアのボスが笑う。 そして私に覆いかぶさり、形容しがたい味のキスをする。 連れてこられてから、私は寝るとき、常に彼のベッドに引き込まれていた。 ××されることはないものの、あちこち触られ、舌で触れられ、抵抗出来ずに震え、ただ耐えるしかなかった。 「さて、お嬢さん」 ブラッドが私から離れる。 いつもはこれで終わりだ。 触るだけ触るとブラッドは別の部屋に去り、私はようやく解放される。 やっと終わりが来たことに私は安堵した。 けれどブラッドはかたわらに座り、前をゆるめ……を出した。 「……?」 傷が治るまでしないはずなのでは?と警戒する私に、 「今回はずいぶんと許してくれたからな。私も一人で終わるほど耐えられそうにない」 「……っ!」 ブラッドの言わんとしてることが分かり、凍りついた。 「女王の調教の成果、私にも見せてくれるだろう?」 女王、というのが何のことかよく分からない。 でもブラッドが私にさせようとしていることは分かった。 逃げようとする私を捕まえ、ブラッドは無理やり、自分の前に私を跪かせる。 部屋は恐ろしいほど静かだけど、外には何人もの護衛の人が見張っているらしい。 わめいても叫んでも、どうにもならないと、経験から知っている。 拒み通しても、傷に触れられ痛いことをされるだけ。 「早くしなさい、お嬢さん」 私は涙をこぼし、屈辱に震えながら、先走りのものに光るブラッドの……に触れた。 私が震えながら奉仕を続ける間、ブラッドは満足げに私の頭を撫でていた。 「今の君は本当に可愛いな。何をしても、させても許してくれる。 君を屋敷に連れ帰る時が楽しみだ」 そう言って……私の口の中で達した。 「とりあえず、次の会合で君の意見を聞くことで何とか合意した」 「どうも……」 私は力なくうずくまったまま夢魔を見上げる。 ここのところ、夢の中ではずっとうずくまっている。 夢魔はブラッドに嫌な事をされるようになってから、何度も夢の中に現れる。 悪夢を退散させ、私をずっと慰め、励ましてくれる人だ。 彼の事もよく思い出せない。 けれど、今となっては、私をマフィアから引き離そうとしてくれる人は全て味方だ。 「礼ならグレイに言ってくれ。帽子屋は言い逃れようとしたが、グレイが尽力した。 君の意見を聞くべきだと強硬に主張して、強引に採決に持ち込んだんだ。 当然、城と森の勢力が賛成に回って、君の参加が決定された。 あとは君自身が、会合で希望する滞在場所を述べればいいだけだ」 「そうですか、良かった」 これで森に戻れる。 けれど夢魔は首を振る。 「これは塔の見解でもあるんだが、森の滞在には賛成しない。 眠りネズミはマフィアの下っ端だし、チェシャ猫も空間をつなげる仕事があって常に森にとどまっていられるわけではないんだ。 そうすれば隙をうかがっていずれはマフィアが来ることになる」 「…………」 確かに、ボリスもピアスも会合なんかのときは交代で出かけ、ご飯や包帯の換えに来てくれた。 嫌な顔は一度もしなかったけど、代わる代わる会合に出て、私の面倒を見に戻る生活は大変そうだった。 かといって、ハートの城には私を襲った騎士がいるらしい。 「だから塔、ですか?」 私は夢魔を見上げる。 「君の嫌いなマフィアよりは、安全だろう?」 うつむく私に夢魔はふわっと近寄って額にキスをした。 「塔で療養して、早く元気になってくれ。そしてまた私とグレイに珈琲を淹れてくれないか」 珈琲?そんなもの、淹れられるんだろうか。 それに……グレイ。 誰だろう。大切な人の名前だった気がする。 思い出せそうで思い出せない。 けれど、それを問う前に夢魔は優しく微笑み、夢の空間は遠く薄れていった。 そして次の朝、ブラッドの腕の中で目が覚めたとき。 私の傷は完全に元に戻っていた。 4/4 続き→ トップへ 小説目次へ |