続き→ トップへ 小説目次へ ■ハートの城の書庫・中 ※R18 時間帯は夜に代わり、書庫には薄明かりが灯る。 ビバルディはドレスを脱ぎながら笑った。 「願いとは、女王の一夜のお相手じゃ。ああ、安心おし。 女同士だからおまえの大事な部分は守ってやるよ。 惚れた男のために取っておきたい場所には傷一つつけぬ」 「……それ、温情のつもりなんですか?」 言い繕われたところで無理やりは無理やりだ。 「ほほほ。本当は強引にでも奪ってやりたいがな」 「ど、どうやって……」 「男女の交わりを真似る方法など、いくらでもある。何なら……」 「い、いえ、結構です!」 ――ていうか抵抗出来ない流れなんですか? 私と言えば女同士のためか切迫感が薄く、それどころか『またか』という心境になっている。 ……自分がこの壊れた世界に慣れつつあるからだろうか。 抵抗すべきだと奮い立つ前に、下着姿になったビバルディが私に唇を重ねる。 まだほんの少しチョコレートの香りが残っていた。 そして彼女は私の服に容赦なく手をかけ、肩をむき出しにする。 「――っ!」 ブラッドにつけられた傷は完全に消えているはずなのに、ビバルディは全く同じ場所に歯を立てた。 確実に場慣れしつつある自分に、私は小さくため息をついた。 ――汚れましたよね、自分。 薄明かりの灯る古い書庫の最奥に、女二人の声が響いていた。 「ん……ぁ……いや……」 「そんな声を出して……まだこれからじゃぞ、可愛い子」 「だって……」 場所が悪い、場所が。 誰も来ない書庫の古テーブルの上。静まりかえった知識の殿堂で、私たちは下着、しかも女同士で絡み合っている。 「ん……んん……」 「ほら、もっと舌を動かして。そう、良い子じゃ」 女同士で抱き合い、飽きる事無く唇を求め合う。 薄布越しに互いの胸の膨らみがこすれ合い、刺激されたわけでもないのに下が熱くなってくる。 ビバルディが私の肌着を持ち上げ、今度は直接、胸をわしづかみにする。 「……ゃ……!」 思わず私は痛みにうめいた。 「ふう。わらわが最初に愛でたかったのう。ほんに、男と来たらろくでもない」 「…………?」 ――な、なんで知ってるんですか? ペーターがエースにされたことを口外するわけがないし、ブラッドと女王に接点はないはず。 だけど深く考える前に女王がテーブルの上で少し座り位置を変え、足を開く。 そして私に、ほら、と手招きする。 「え……?」 「上手く出来たら、ご褒美をあげよう。おいで、ナノ」 言い方は柔らかいけど、これが命令であることは分かっていた。 「その……私、そういうことは……」 「おまえは本を読みたいのだろう?ナノ」 「…………」 女王様の命には誰も逆らえない。 卑猥な水音が書庫に響いている。 「ほほ。上手い上手い。ほら、もっと奥に入れて、強く動かして……」 「ん……んん……」 「これ。それはただ動かしているだけだ。もっと舌先で先端を転がして……」 実際には頭を押さえつけられ、息継ぎも困難な状況だ。 薔薇の女王様は、全身から薔薇の香りがした。 女同士なので、気持ちのいい場所については知っている。 ブラッドにされたときのことを思い出しつつ、感じた箇所を必死に舌で奉仕する。 ――て、こういう経験値が上がるって、すごく嫌なんですが……。 オマケにいくら頑張ってもビバルディの声が全く乱れないのが個人的に悔しい。 「いい子……初めてにしては悪ぅないよ」 舌の上にあふれる愛液を何度か喉を鳴らして飲み込むと、やっと満足してくれたのか、頭を解放された。 そして抱き起こされ、今度は豊満な胸に顔をうずめさせられる。 「舌使いはまあまあじゃな。でも、もう少し口と舌の筋肉を鍛えておおき。 さすれば、もっと男を喜ばせられるようになるぞ」 「……そ、そういう、媚びる方向はちょっと……」 白百合の香りのせいだろうか。どうも頭がぼんやりする。 気がつくと私は無意識に手を動かし、女王の胸に舌を這わせていた。 そんな私の頭を、犬でも撫でるように撫でながら、 「媚びてなどいるものか。男など上手く悦ばせれば何でも貢いでくれるぞ」 ……それ私が貧乏人なことを遠回しに皮肉っているのか。いえ、さすがにひがみか。 4/6 続き→ トップへ 小説目次へ |