続き→ トップへ 小説目次へ

■はた迷惑な争奪戦・7

※R12

ハートの騎士エース。
最強の赤の騎士で、ハートの城の軍事責任者。
なのに放浪癖があり、しばしばお城を放り出す困った人。
彼は時間の番人ユリウス=モンレーの親友で、私が時計塔にお世話になっていた頃はよく会っていた。
私にはそれだけの人だった。知り合いになってからは長いけど、決して深いつきあいはしてこなかった。
好きだと何度も言われたけど、彼のおふざけの延長のようなもので、実際に何かされたことはなかった。

けれどなぜだろう。
クローバーの国になって。
彼は妙に私に絡むようになった。
絡むだけならまだいい。
明確な意図を持って、私を傷つけるようになった。

「ん……んん……」
壁に押しつけられ、唇を塞がれながら必死で首を振る。
けれどエースは私を解放しない。
逃げる舌に彼の舌が絡みつき、きつく吸い上げる。
唾液が混ざり、あふれたものが口の端からこぼれ首をつたう。
「ん……」
エースは何度か離してはさらに深く押しつけてくる。
「んんっ!ん――っ!」
それどころかナイトメアの上着を左右にはだけ、遠慮無く胸に触れてくる。
私は必死にエースの胸を叩くが抵抗にもならない。
やっと口を解放されたとき、見られてもいいから人を呼ぼうと、大声を出そうとした。
けれどエースはあっさりと手で私の口を塞ぎ、私の胸に……舌を這わせた。
嫌悪が背筋を這い上がる。
けれどエースはわざと音を立てるように唾液を絡め、私の胸の先端を舌で弄ぶ。
そんな拷問のような時間がどれだけ過ぎただろう。
ようやく糸を引いて口を離し、エースは真っ青になった私に笑う。
「俺のつけた痣はいいとして……帽子屋さんの印に夢魔さんの上着か。
君って子は、本当に皆に色目を使うから困っちゃうぜ」
痣も良くないけど、色目とは失礼な。
けれど、反論したくても口を塞がれてかなわない。
久しぶりに近くで見る、中身のない赤の瞳。
私は自分の身体が震えるのを感じた。
「俺も、帽子屋さんみたいに誰にでも分かる痕をつけた方がいいかな。
君の顔を傷つけるとか、目をえぐるとか」
「――っ!!」
言葉を失う私にエースは声をあげて笑う。
「なんて、ね。あはは。本気にした?」
した。気分次第では本当に実行しかねない男だと今は知っている。
――でも、いったい何で。
ハートの国でも多少壊れ気味なところはあったけど、ここまでひどい性格だっただろうか。
何の因縁で私を傷つけようとするのか。

――ユリウス。あなたなら分かるんですか?

私は厨房にこもっていて、二人の友情までは知らない。
ユリウスがどうやってエースの危険な側面を抑えていたか、しるすべがない。
「じゃあやっぱり、『君を狙う人にだけは分かる』痕をつけるか」
「っ!!」
エースは私の前をはだけたまま、床に押し倒した。
誰が通るか分からないクローバーの塔の廊下だ。
――エースっ!!
「うんうん。わかってる。見られたくないなら大人しくしてくれよ?」
そう言って笑うと、エースは片手で自分の服のベルトを緩めだした。
彼が本気だと分かって、私はゾッとする。
渾身の力で暴れたけれど、とんでもない体力の男は全く動かない。
やっと私の手から口を離し、今度は私の下の服に手をかける。
――止めて、エースっ!!
「よっと」
軽い声と共に、引きちぎれる下の布地。
声も出ない恐怖の対象は、間近に迫る貞操の危機か、騎士の計り知れなさか。
「――っ!!――っ!」
必死で首を振るが、エースは機械的に私の衣服をずり下げる。
むき出しになった下半身が塔の外気に触れ、私は本当にこれが現実なんだろうか、とさえ一瞬思った。
「じゃ、大人しくしててくれよ……ちょっと、いやかなり痛いかな?その代わりすぐ終わらせるからさ」
そう言って笑う騎士は本当に爽やかだ。
彼は私の両足に手をかけ、無理やり開かせるとその間に身体を割り込ませた。
完全に晒された下半身を隠すものは何もない。
もうほとんど全裸に近い。もちろん一切の準備は出来ていない。
「それじゃ行くぜ、ナノ」
エースは前をゆるめ、自分の――を出そうとしていた。
もう羞恥心も恐怖心も限界だった。
騎士に全身を押さえつけられながら、私は涙声で叫んでいた。

「助けて、助けて、ブラッドっ!!」

「ナノっ!!」

ブラッドではない、誰かの声がした。

3/5

続き→

トップへ 小説目次へ

- ナノ -