:: 青黄は硝子越しに躊躇いながら、額に誘うような短いキスをするでしょう。
12/09 23:06
診断メイカーより shindanmaker.com/53071


車のエンジン音が静かな空気の中響き渡る。年末が近付いた東京の早朝は、予報よりずっと冷え込んでいた。二年ぶりに帰国した青峰は始発でアメリカへと帰る予定だった。マンションの前で予約したタクシーに乗り込むと、車外の黄瀬がひらひらと手を振った。滞在していた一ヶ月間、幾度となく赤くなった目尻は色を変えず、口元は薄く笑ってさえいる。
結局一度も泣いたところを見なかった、と青峰は眉根を寄せた。あいつは昔から妙なところで意地っ張りだ。

運転手が荷物を積み終わり乗り込んできた。黄瀬が近寄ってきたので窓を開けようとすると、白い息を吐き慌てたように止められる。ちょいちょいと手招きされて顔を近付けると、硝子ごしに黄瀬がキスを落とした。

いってらっしゃい

そう形作った唇はやっぱりへの字にならなくて、「出発しても大丈夫ですか?」と尋ねる運転手に青峰はぞんざいに頷いた。

「早く一緒に連れてかねえとなぁ」


はぁ、車内に暖かいため息が満ちた。


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