ーーーカシャ カシャ

シャッターが切られる音がする。
カメラマンが声を掛けてくるのに合わせてポーズや表情を変え、撮影をしているとスタジオにUNDEADが入ってきた。どうやら私の後に撮影をするらしい。今日は事務所の宣材写真の撮影だから、同じ事務所の彼等が来るのも納得だ。

お互い、アイドル時の衣装のときに会うことが珍しいからか私を見た薫くんがひゅう、口笛を吹いた。

「流架ちゃんかっわい〜!」

「あっはは〜ありがとう」

ファンの子達にサービスするように薫くんに手を振ると丁度そのタイミングでシャッターが切られ、カメラマンが"アイドルらしくて良いね"声を上げた。

レンズから目を離したカメラマンが私に少し休憩と声を掛けて離れていく。全身のショットを撮る前に先程撮った写真のチェックをしたいらしい。まあいいか、と水を飲みに行くと後ろからジャケットを掛けられた。ジャケットに残った温かさと良く知った匂いに包まれる。振り向くとインナー姿の朔間さんが立っていた。

私のアイドル時の衣装は露出度が高めだから気を遣って自身のジャケットを掛けてくれたようだ。嬉しくて周りにバレないように襟元を軽く握った。

「ありがとう朔間さん」

「女の子なんじゃから、大事にしなさい」

「ねぇねぇ、流架ちゃんって零くんの事名前で呼ばないの?」

薫くんが近付いてきて私達だけに聞こえるように小声で話す。職業柄、付き合っている事は朔間さんの弟である凛月くん以外には口外していないのだけれど薫くんは学生の頃から気が付いているようで、たまにこうやって突いてくる。気付いている人に嘘をつき続けるのも疲れるし軽く流しながらも事実を言っているのだが、この話題は。

「我輩も同期なんじゃがの〜、なかなか呼び方を変えてくれなくて我輩寂しい」

2人きりのときは名前で呼ぶようにしているが、皆の前での名字呼びが本人も気にくわないらしく、この手の話題にはやたらと食いつく。多分同じ条件である薫くんは名前で呼んでいるからそれも気にしているのだろう。

「...プライベートでは呼んでるでしょ?」

「ばぁか、いつでも呼んでほしいんだよ"俺"は」

「!」

昔の口調で私だけに聞こえるように言われてドキリ、胸が高鳴る。『俺』呼びで昔のような荒っぽい喋り方をする彼に弱いのを知っていてこうやって話してくるから、本当にズルい人だ。少しだけ睨んでやると彼は満足そうに微笑んだ。

「...簡単に呼んでやらないですから、朔間さん」



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