「「....」」

いつもなら会話が盛り上がっている控え室が、今日は沈黙に包まれている。あまりにも静か過ぎて目の前で困惑している様子の同期をチラッと見てからスマホに目を向けた。


なぜこのようになっているかと言うと。
私が所属しているユニット『R's』は元々単独でライブを行う予定でレッスンや仕事をこなしていたのだが、事務所の上の人達が企画を持ち出してきたお陰で今まで調整してきたスケジュールが全てひっくり返り、急にUNDEADとの対決ライブをすることになった。彼らも単独ライブを行う筈だったらしい。企画を発表されたときは準備の時間がなくて本気で焦った。

結局、私たちR'sの単独ライブは決行するものの、そこでお披露目する筈だった新曲を今日の対決で披露することになり、ギリギリまで振りと歌詞を入れていた為、正直ヘトヘトだ。普段ならいくら疲れていても相方である朔間流雨ちゃんとはバタバタイチャイチャしていて、周りもそれを認知しているのだが、今日は珍しく離れた場所に腰掛け、同室であるUNDEADの皆を困惑させていた。


「ねぇ...2人ともどうしちゃったの、零くん」

「はて、我輩にもさっぱりじゃ」


ヒソヒソと小声で話す彼ら。
イヤホンをして(多分)新曲を聴いている流雨ちゃんには聞こえてないかもしれないが、私にはばっちり聞こえているぞ。2人の方をチラッと睨みつけるように見ると、丁度彼らも私の方を見ていたようで、目が合った事に驚いたらしく、びくりと体を震わせた。

「え、流架ちゃんたち今から俺らと対決だよね?...大丈夫?」

「大丈夫って、何が?」

「流架」

普通に疑問に思っただけだったのだが、言い方に刺があったらしい。朔間さんに軽く睨まれた。身内にはとことん優しい彼だ、仕方ない。軽く息を吐き、椅子の背凭れに寄りかかる。

「何を心配してんのか分かんないけど、大丈夫なんじゃないの〜?普段通りやるだけだし」

そう言った直後、部屋のドアがノックされてスタッフさんが顔を覗かせた。

「R'sさん、そろそろお願いします」

「はぁい」「はい」

「ひぇ!返事もバラバラ!?」



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