「...う...ん」

力強く腰の辺りを掴まれて声が出る。
壁に手をつき、襲ってくる圧迫感に息を止めて耐えていると直ぐ後ろから"息して"と声が掛かった。無理だよ、そう言いたいがどうしても喘ぐような声しか出ない。荒い息遣いが部屋に響いて顔に熱が集まる。

「ほら」

「アッ...朔間さぁ...っ」

圧迫が少し緩まったと思い油断していたところにまた更なる圧迫が襲ってきて思わず、背後で私の腰に手を当てている人物の名前を大きな声で呼んでしまった。一応、ここは控え室の為ずっと声を抑えていたのだけれど限界だ。

「無理っ...んぅ!」

「エッロイ声...兄者が聞いたらどうすんの?」

「やぁ...」

「ふふ、綺麗だよ」

振り返ってイヤイヤ首を振る。目の前にいる朔間零と似た容姿をした人物が朔間零と同じような笑みを浮かべて、私の目に溜まった涙を親指で掬った。その仕草にきゅんと胸が締め付けられる。

「やだぁ...すき」

「俺もだよ。兄者やめて俺にしない?」

ふわりと優しく抱き締められて鼓動が速くなる。朔間さんとは違う匂いなのになにか安心するのは兄弟だからだろうか、それとも私がいつも一緒にいる相手だからだろうか。大好きの意を込めて私も手を背中に回そうとしたところで控え室のドアが大きな音を立てて勢いよく開いた。



「流雨!!!!!!」


息を切らして入ってきたのは白タキシード姿の朔間零。
珍しくおじいちゃんっぽさはなく、浮かべている表情とセットされた髪型のせいか昔の彼を思い出させる。私に抱き付いていた彼女は兄である朔間零を見て残念そうに口を開いた。

「あーあ、折角相方とイチャついてたのに。てか何で仕事でも兄さんに相方取られなきゃいけないわけぇ?この子のウエディングドレス姿は譲りたくなかったんですけど〜」

「お主は写真集で相手役してたじゃろ!」

「可愛い可愛い"私の"相方ですから。さっきだってコルセットと背中のリボン締めるのに可愛いエロい声出してくれてたのにさぁ...」

私の姿を隠すように更に抱き締めてくる朔間さんの妹。
言われると恥ずかしいが実際そんな声を出していたのは事実だ。彼氏である朔間さん(兄)に聞かせたことの無い声では無いが恥ずかしさは消えるものではなく。メイクが落ちない程度に手で顔を覆った。




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