「あぁ!?犬扱いすんな!」

ああ...ドアに近付くと更に騒がしい。
そしてこの喋り方、なんだか昔の"彼"を思い出してしまう。
騒がしいのはあまり好きではないが、私を呼び出した人物は紛れもなくこの教室にいる為、仕方なくノックしてドアに手をかけた。

「はぁい♪」

直ぐ近くでテンションの高そうな男の声がして手を掛けていたドアが内側から開かれる。これだけ騒がしいとノックの音なんて聞こえないだろうと思っていたが、ドア付近に人が居たらしい。ひょい、顔を出した金髪の色々と緩そうな青年は私の顔を見て目を丸くした。

「えっ朔間さん!?」

「なんじゃ薫くん、突然...」

よく聞き慣れた低い声が教室の中から聞こえる。
いつもよりトーンが低くのっそりしているから、割と本気めで目の前の彼の大声がうるさかったのだろう。よく考えてみればやっと日が落ち始める頃だ。

"朔間、さん?"とドアから身を離す"薫くん"と呼ばれた金髪の男。空いた隙間から顔を覗かせると、教室の中心でこちらを見ていた黒髪長身の男が私を捉えて固まった。おいおい、貴方が呼び出したんだろう。同じように先程ぎゃんぎゃん吠えていたらしい男も私の方をみて固まった。まあ...この外見だ、仕方ない。だが、皆が固まってしまっては話も進まないどころか何も出来ない。


「...こんなところに呼び出したんだから、それなりの理由なんでしょうねぇ、朔間さん?」

「...ああ、そうじゃった。思ったよりも早かったのう、嬢ちゃん」

くく、と笑った彼はその整った顔に優しい笑みを浮かべてこちらに近付いてくる。ドアを開かれ優しく腕を引かれて、部屋に招かれたと思ったら背後から思いっきり抱き締められた。

「琉雨〜!やっとお兄ちゃんに会いに来てくれたんじゃな〜!!」

「ぐっ...油断した...朔間さんって呼んだ意味!」

首元に回った実の兄の腕を叩く。
この男は力加減なぞせず思いっきり抱き締めてくるから、こうなると毎回窒息しかけるのだ。それに彼は"私達"の盾になろうとしてひたすらに姉弟の事を隠そうとするから、私もそれに乗っかって人前で"兄"と呼ぶのを控えているのに、こんなにあっさりバラされると拍子抜けする。

「っ...というか、先に説明してあげて!」

「おお、そうじゃった。本当はアドニスくんが来たから説明しようかと思っていたのじゃが...」

兄が口元に手を当て首を傾げたところで教室のドアが開き、熊のような大男が現れた。彼は教室内で混乱している彼らとは違って顔色を変えずに私達を見ていたが、少し間を開けたあとに「どうして朔間先輩が2人?」と首を傾げていた。

兄は"我輩たち、そんなに似ておるかの?"と笑っていたが、周りが混乱するのも無理もない。私が今日の様に髪を兄のようにセットすると本当に双子になったかのようにそっくりになるのだ。実は撮影が終わった後、わざとこの髪型にしてきた。

「我輩の一つ下の妹じゃよ」






×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -