「ねぇ、由梨。彼氏出来たんだってね、おめでとう」
「めでたいって顔してないよ菜摘姉」
机に伏せながら祝うと、つんつん、頬を突かれながらそう言われた。チラッと突いた主を見ると、嬉しそうに頬をピンクに染めてワクワクしたような表情を浮かべている。
私はあの後、目の前にいる中学生・由梨の兄、水野祐を突き飛ばし逃げ、急いでこの部屋に来た。...結局、由梨の兄だからこの家に帰ってくるんだけど。
久々に会った由梨は彼氏が出来たからか女の顔をするようになっていて、私より大人びて見える。部屋は変わらずで、少しだがマイメログッズも置いてあったりと変わっていないようだ。
「菜摘姉〜久々に会ったのに嬉しくないの〜??私、飛び付かれたときちょー嬉しかったんだけど!」
拗ねたように頬を膨らませる彼女。
あざとさは兄とそっくりらしい。
目の前にいる天使にこいこい、と手招きして嬉しそうに近付いてきたところを抱き締めてやった。
「ひゃ〜」
「由梨ぃ...嬉しいんだけどね、嬉しいんだけど...」
「どしたの?」
ケラケラ笑う彼女の頭を撫でつつ、先程あった事を思い浮かべる。
−−−−−「俺、お前の事女として好きだわ〜」
咄嗟に逃げてしまったけど、あれは本心だろうか。
今まで女関係がゆるゆるな彼を見て来ている為、なんだか複雑な気分だ。それでも赤面してしまうくらいには嬉しいと感じている自分がいる。
「...あんたの兄貴に告られた」
「え、お兄ちゃんに?」
「で、パニクって逃げた」
「それで私に会いに来てくれたの?」
「由梨に会って癒されたかった」
「お兄ちゃんと私同じ家だけど。馬鹿なの?」
デレたら馬鹿にされた。
同じ家に帰ってくるなんて知ってるし、しゅしゅの家に逃げ込んでも家知ってるし、私の家もこの家の隣だし!どこ行っても逃げ場無かったんだよ...。
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