「お前、最近危機感無くね?」

チャラい男と会話を終わらせた幼馴染が俺らの元へ戻ってくる。先程の対応が気に食わなかった俺はすかさず彼女にそう言った。彼女は少し不満そうな顔で首を傾げながら口を開く。

「なんで危機感?」

その返答に余程警戒していないのが分かり胸の奥がぎゅうと締め付けられる。危機感の無さにイラッとして予想をしていたよりも冷たい声が出た。

「最近チャラい男とつるみ過ぎ。大体、男と2人なんてあぶねーだろ」

「友達と遊ぶだけじゃん」

「それでも何されるか分かんねぇだろ!」

「何熱くなってんの?祐には関係ないじゃん」

「っ...「おいお前ら止めろ」

ヒートアップして来たところを俊介に止められる。
正直助かった...もう少しで取り返しのつかない事を言うところだった。やっと彼女が俺の事を受け入れてくれて、こうやって普通に接してくれるようになったんだ、変な事言って今までの努力をパァにはしたくない。


「祐、菜摘に当たんな。菜摘も祐の言ってる事しっかり理解しろ」

「悪い...」

「...ごめんなさい」

お互い小さく謝って、なんとかその場が収まる。
幸いにも昼休みで人が少ない時間だった為、周りもそんなに騒ついてはいない。ゆっくり息を吐いて頬杖をつこうとしたときに名前を呼ばれる。


「ゆ「ゆーう♪」

廊下から名前を呼ばれるのと同時に言い合いをしていた幼馴染が俺の事を呼ぶのを聞き逃さなかった為、廊下の方には手を振って"後でね〜"と軽く対応し、改めて幼馴染の方へ向き直った。てっきり他のクラスの女子の方に行くと思っていたんだろう、顔を覗き込むと彼女はびっくりしたようで目を丸くしていた。

「菜摘?」

「い、や...行かなくていいの?待ってるんじゃ...」

名を呼ぶと目を逸らして、もごもご自分を後回しにするよう言葉を紡ぐもんだから、ぎゅっと握りしめている彼女の手を優しく、でも逃げられないようしっかりと掴んだ。

「菜摘の方が大事」

「っ...」

しばらく口を開け閉めさせていた彼女だが、俺が彼女の手を愛おしげに撫でていたのに気付いて掴まれていない方の腕で口元を隠す。そしてその整った顔を珍しく紅く染めて小さく小さく呟いた。

「...ずるい....っ」

「!



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