突然名を呼ばれて顔を上げる。
しかし目の前には誰も居ない。
どこから呼ばれたのかわからず、キョロキョロと首を動かしていると"ここだよ"と上の方から声が聞こえてきた。振り向いて声のした2階を見る。
「...祐」
「そんなところに座り込んでどうした?」
幼馴染が窓からひょっこり顔を出して覗いていた。座り込んでいる私を不思議そうに見ている。...ここで、助けを求めなければ私は動けない。でも原因が原因なだけに躊躇ってしまう。声が出ない。
「あ...」
「菜摘?」
また、あのときみたいに何か失ってしまったら...
「だ...大丈夫。踏み外した、だけ!」
「...ふーん?」
慌てて答えた私に不思議そうに首を傾げた彼だったが、廊下の向こう側から女の子から名前を呼ばれ、窓から出していた首を引っ込めた。幼馴染が居なくなったことにほっと息を吐く。
「...良くないけど良かった」
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