「可愛いから突然デレるのやめて」

「はぁ?」

同じ事をやり返しただけであってデレた覚えなど一切無い。寧ろいつもは彼の方が恥ずかしいというか照れるような事をしてくる。こういう事には慣れている筈の祐は何故か耳まで真っ赤にして私から目を逸らすから。

「なんかこっちまで照れる...」

私まで顔が熱くなってきた。
学校の廊下で手握って顔赤くしてるなんて、他の人に見られたら変なカップルがイチャついてるとか思われそうだ。祐のファンの子も居るし、祐のことを恋愛感情で好きな子も多いのに、付き合っていない私と変な噂を回されても困る。

「祐、ちょっと...手ぇ離「おい」

祐に握られている手を解こうとしていたらすぐ側から声が掛かった。パッと顔を動かすとそこにはもう1人の幼馴染。


「「しゅしゅ!」」

「お前らこんなとこで何してんだよ」


彼は首を傾げて私達を不思議そうに見つめていた。
しゅしゅが声を掛けてきた拍子に祐が掴んでいた手が離れて、ほんの少しだけ寂しくなる。


「聞いて俊介、菜摘がデレた」

「いや前髪整えただけ」

「イチャついてんのかと思った」


しゅしゅの言葉に1番びっくりする。
私は言ってないが、お互い好いているのは確かだ。
だが付き合っていない事を知っていて、更にそういう事に疎いはずのしゅしゅに言われると一気に焦りを感じる。


「...俺が付き添うから安心しろ」

「う、ん」


焦りだした私に気が付いたのか、しゅしゅは小さくそう言ってくれた。祐は意味が分からずに首を傾げていたが直ぐに私のハチマキを見てパッと目を輝かせた。


「あ、菜摘!終わったらハチマキ交換な!」





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