「...あれ?」
ドアの方に顔を向けると鞄を肩に掛け、不思議そうに立っているもう1人の幼馴染。彼は私と康太くんを交互に見ると本当に驚いた顔をして、一言。
「何で菜摘がいんの?」
長身の男に拉致されたーなんて言おうかと思っていたら、彼が後ろから蹴りを入れられ教室に倒れ込むように入ってきた。緩く結った蒼い髪からふわりと甘い匂いがする。後ろから蹴りを入れた人物は片手に苺みるく≠ニ牛乳≠持って姿を現した。
「お、はやーい。しゅしゅありがと」
「おう」
「ちょっ、ちょーっとストップ!」
動揺もせずに会話を始める私達を見て床に座り込んだ彼が声を上げる。彼は苺みるくのストローを咥える私の隣に移動して着席し、私をくるりと自分の方に回転させた。がっしり腕を掴まれてちょっと痛い。
「...学校で俺と居るの、嫌なんじゃないの」
手の力とさっきの勢いは何処へやら。
弱々しい声と眉尻を下げた不安な表情。
私の目の前に座っている康太くんはそんな祐の顔を見てびっくりしたみたいで、しゅしゅの方をチラチラ確認している姿が視界の端に映る。
暫く黙って彼の顔を見ながらそのまま糖分を摂取していたが、だんまりし過ぎると流石にダメかとストローから口を離した。苺みるくの甘い香りが広がる。
「嫌だったらここに大人しく座ってないでしょ」
「俊介どうしよう...菜摘がデレてくれる...」
「いや、デレてないから」
「康太に感謝しろよ」
「えっ、康太が拉致ったの!?」
「あはは...」
「康太グッジョブ!!!」
「って言いながら私に抱き着くんじゃない、離れろ水野」
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