俊介に抱えられて来たのは生徒会室だった。
何故生徒会室?と思っていると、隣にいた長谷川くんが察したように「よくここでご飯食べてるんだ」と笑った。
私を抱えていたしゅしゅがパイプ椅子に座らせてくれる。ここまできて抵抗する気は無いから、大人しく座ってしゅしゅにお金を渡す。苺みるくと一言だけ言うとやれやれと溜息を零してから生徒会室から出て行った。なんだかんだ、昔から私には甘い。
「強引に連れて来てごめんね」
「いや...連れて来たのはしゅしゅだし」
屁理屈みたいな事を言うと長谷川くんはまた人懐っこい笑顔を浮かべた。...ここに連れて来られた理由は何となく予想が付いている。しゅしゅじゃない方の幼馴染の誰かさんが元凶だろう。いつも連んでいるし、会話に出てくるようになった私の事が気になっても仕方ない。
どこまで知られているか分からないが隠していてもいつかバレる事だしメロちゃんのカバーがついた携帯を取り出した。目の前に座った長谷川くんが携帯カバーを見てあっと声を出す。
「藤咲さんは、やっぱりマイメロなんだね」
「やっぱりって事は、水野くんね?」
「あはは...最近、祐の話に藤咲さんが良く出てくるんだ。今までそういう話は聞いたこと無かったんだけど、祐が初めて女の子の話をしてくれたから気になっちゃって」
長谷川くんが困ったように、でも目をキラキラさせて話すから後で祐に注意しようと思っていたのもどこかに飛んでいってしまった。藤咲さんは祐にとって大切な人なんだね、なんて言われると何も言えなくなってしまう。
「...一応、幼馴染だから」
「道理で。祐の妹さんとも仲良さそうだし、小さい頃からお隣さんなのかな?」
そこで少し不思議な顔をしたが、長谷川くんは何か悟ったのかそれ以上は何も聞いて来なかった。...祐が気を許す理由も分かる気がする。
「...康太くんはプリンが好きなの?」
「っ、うん!席隣だし知られてるよね...。男子でこういうの好きなのって気持ち悪く思われるかもしれないけど...」
「幼馴染があんなだし、そんなの気にしないって」
「あ、そっか」
少し距離が縮まったか、2人で笑っていると生徒会室のドアが開いた。
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