「由梨?」


名前を呼び掛けながらリビングに入る。
キッチンの方から物音がし、そちらを覗くと由梨がマイメロのノートを手に持って立っていた。


「由梨」

「菜摘姉...」

「祐と喧嘩したでしょ」


後悔している表情を浮かべる彼女に笑いかけると体に衝撃が走った。私より少しだけ背の低い由梨が抱き着いている。今日の私は水野兄妹にモテモテだな、なんて心で思いながら口を開いた。


「私も妹だから由梨の気持ち分かるよ」

「...菜摘姉も?」

「うん、一緒。由梨の気持ちすっごく分かる。でもね、おねーさん、大事な人達が傷付くのは見たくないな」


そういうと由梨は埋めていた顔をハッと上げる。
3年間避けてたけどね、笑う。
由梨は気まずそうに目を伏せた。


「由梨の事本当の妹みたいに大事に思ってる。...でもそれと同じくらい祐も大事なの」

「...大事な、人」

「由梨、ちゃんと言わないと気持ちは伝わらないよ。やっていい事と悪い事、わかるよね?」

「...うん」


素直に頷く彼女を引き剥がし、玄関の方へと連れて行く。動揺しているものの拒否しない由梨。そのまま玄関の前で背中を軽く押してやる。


「私はお兄ちゃんと当分仲直り出来ないけど、由梨と祐は仲直り出来る。だから遅くないよ」

「菜摘姉...」

「大丈夫!私、待ってるから仲直りしておいで」






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