薄眼を開けて彼女の表情を盗み見る。
頬を薄く色付け、恥じらうように唇を合わせる彼女。縋るような顔と唇の柔らかさ、ほのかに香る甘い香りに欲情する。唇が離れた後もなんだか離れがたくて額をくっつけ摺り寄せる。
「...可愛すぎてもっとしたくなる」
「由梨が帰ってきちゃうよ」
そう言いながらも俺を拒絶しない彼女。
ゆっくり少し強めに抱き締めると彼女の腕が俺の背中に回った。下手に手は出さない、ぐっと堪えて背中を撫でると彼女がぽんぽんと背中を優しく叩いた。
「優しいね」
「当たり前だろ」
今までは色んな女の子と仲良くしてたけど、菜摘は初めて出来た本当に大事な本命の子。嫌がる事はしたくないし、彼女の為に時間を取ってあげたい。楽しい事嬉しい事を一緒に分かち合えたらいいと思ってる。大事にしたいからこそ、こんなところで簡単になんて事はしたくない。
「傷付けたくねーもん」
「私が誘っても?」
「う、また大胆な事を言うね」
顔を覗き込まれる。
誘うような表情に負け、顔を近づけてもう一度口付けをした。
「...こんな事しても怒られない日が来るなんてな」
彼女の肩に顔を埋めて小さく呟く。
この間告白してアピールするようになったばっかりで、すぐにこんな事出来るようになるとは思ってなかったからか、唇の熱にやられたからか、頭が追い付かない。
「...傷心オネーサンだからね」
「じゃあそんな傷心菜摘ちゃんを笑顔にさせるスペシャルカレー作りますか!」
ニッと笑って彼女の頬を軽く摘み横に引っ張る。
俺も同じように自分でいーと口を横に開くと、彼女も俺と同じように俺の頬を摘んだ。しばらく見つめ合った後、ふふっ お互い同じタイミングで噴き出した。
「やっぱ笑顔が1番っしょ!」
「カレーでなるかなぁ?」
「祐くんスペシャルカレーなめんなよ」
2人で手を洗いながら笑う。
ちょっと新婚っぽいな、なんて心で思いながら
包丁を握った。
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