母親みたーいなんて笑う彼女を横目に俺は立ち上がり自室のドアを開く。
「メシ作るけど、食べたい物ある?」
「あ、私も手伝う。カレー作ろうよ」
メロちゃん型人参入りの。と立ち上がり、髪を結い出す彼女。そういえば、コイツも親が居ない事が多くて自炊してるんだっけ。いつものようにエプロンを着け、予備の分のエプロンを彼女に渡す。彼女も慣れた手つきでエプロンを着けた。
「なあ、何で今日泊まりに来たの」
鍋を出し、食材を並べながら今まで不思議に思っていた事を聞く。チラッと様子を伺うと、少し困ったような顔をしながら包丁を取り出す彼女。
「んー、今日も紘...ていうかお嫁さんのご両親が来てるんだよね」
「え!」
「この間、お互いの両親とも話したいってなったみたいで。紘とお嫁さんは話し合いの間外出するらしくて、私はどうせ部屋に篭ってなきゃいけないし、だったら祐と一緒の方が楽しいかなって」
包丁を置き、複雑そうに笑う彼女をみて思わず頭に手を伸ばす。ゆっくり撫でてやると気持ち良さげに瞼を閉じるもんだから、そのまま頬まで手を降ろした。指を滑らせると無言でぱちりと開く瞼。
「...」
あ、これキス出来る。と確信したと同時に彼女がまた瞼を閉じた。少しだけ上を向いて、黙って頬を撫でられている。
「(...どうしよう。止められる気しねぇ)」
彼女の可愛らしい仕草と表情に、抑えていたものが溢れ出す。手を後頭部に持っていき、そのまま彼女との距離を縮める。
唇が触れる直前にきゅ、とシャツの胸元辺りを握られるのを感じた。
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