部屋の入り口の方から甘い声が聞こえる。
恐る恐る振り返るとそこには今抱き締めている彼女の兄が笑顔で立っていた。
「げ」
「げ、じゃないだろ〜?」
彼はいつものような可愛らしい笑顔を貼り付けているが、結構怒っているらしい。周りに出ている黒いオーラみたいなのが見えそうだ。
「か...勝手に開けないでよ!」
「悪い、菜摘借りてくぞ」
「え、うわっ!」
ぐいっと首根っこを掴まれ由梨から離されたと思うと腕を引かれて強引に部屋の外へ連れ出された。
やだ〜と抵抗していると、少し強めに引っ張られ彼の方へ倒れそうになる。彼はそれを狙っていたようでそのまま私を姫抱きし、自室へと入り私をベッドにポイっと投げた。
「ひゃっ...」
突然の衝撃に目を瞑って小さく声を出した。
近くに彼がいる気配がする。瞼をゆっくり開くと私に覆い被さる彼がいた。
「エロいコトでもしよっか?」
「やっ...」
耳元で囁かれ、彼のその甘い声に声が漏れた。
彼が私に迫ってくるのと同時にベッドが厭らしく軋む。ふわふわとした癖っ毛の前髪が彼の片目を隠して、彼の色気を更に引き出している。愛おしそうに見つめられて顔が熱くなった。
「...ちょっとは俺の事意識してくれた?」
「...ばか。チャラい」
「あははーごめんごめん。んーでもさっきの声は反則」
少し離れてからエロ過ぎ。と頭を優しく撫でられる。誰が仕掛けてきたんだよ、軽く睨み付けると彼はそれ逆効果だけど、いいの?≠ネんて笑った。
「エロいのはどっちよ」
「好きな女に手ぇ出すのは普通だろ〜?」
「す、き...」
彼がさらりと口にした言葉に胸が高鳴り言葉に詰まる。頬杖をついた彼は少し拗ねた顔をして私を見つめている。目で本気かと訴えかけると、小さく息を吐いてから「さっき逃げられて結構傷付いたんですけど〜」そう言った。
「あ...ごめん」
「まあ、わかんねぇのも仕方ないか。でも俺、自分から告んのお前が初めてだよ」
その言葉を聞いて思わず下を向きがちだった顔を上げる。祐は私とばっちり目が合うと眉を下げて私の頬にそっと触れた。
「好きだよ」
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