「あの日...ちょうどこのくらいの時期だったよね」


ふと中学生の頃に起こった出来事を思い出す。
あんまり思い出したく無い記憶。
祐と呼ばなくなったもう1つの理由。


びしょびしょに濡れた制服。
腫れて赤くなっているであろう熱い頬。
“馴れ馴れしいんだよ。”という言葉。
乱暴に突き飛ばされて強打した背中。
階段で突き落とされたとき捻った右足。

もう3年が経とうとしているのに、痛みや感覚は消えずに鮮明に思い出される。


サッカー部に入っていたしゅしゅはその日部活で、偶々ボロボロの私を見かけて助けに来てくれた。でも私はそれを拒絶、祐には絶対に言うなと口止めして薄暗くなった頃に帰宅した。



「今でも2人といると内心ビクビクしてる」

「今度は守る」

「...いつだろうね、それ」


そう言ってなんだか、ここで言い合いしそうになりそうだったから席を立った。机の上に置いていた鞄を手に取り肩に掛ける。


「ごめん、今冷静じゃない。変に言い合いしたくないから、もういい?」

「...ああ」


しゅしゅの返事を聞いて、教室の外へと足を進める。ドアを出ようとしたところで、丁度教室に入って来ようとする人とぶつかった。予想以上にふらつき、そのまま後ろに倒れそうになる。教室の中から慌てて立ち上がる音と、私の名前を呼ぶ声がした。と。


「おっと、あぶね〜!」


耳元で聞き覚えのある声がする。
尻餅をつき衝撃が来るはずだった下半身には何も痛みは無く、代わりに腰の辺りに大きな手が添えてあり、ふんわり嗅ぎ慣れた甘い匂いが鼻腔をくすぐった。ゆっくり目を開くと、大丈夫かと心配そうに顔を覗き込んでくる蒼い髪の幼馴染。


「...祐?」






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