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「菜摘またね〜」

「うん、ばいばい」


徐々に教室から居なくなっていく友人達に手を振り見送ったあと、静かになった教室に1人残り、携帯の画面を見つめる。

朝、幼馴染の2人と会った後今日も呼び出されるんじゃないかと内心ビクビクしていたがそんな心配も無く。平和に時間が過ぎ、気付けば放課後になっていた。

いつもであれば私も友人や幼馴染たちと帰っている筈だが昼頃、幼馴染から放課後教室に残るよう連絡が来ていた為、素直に呼び出した本人を待っている。


「...はぁ」


教室の窓から外を見る。
幸せそうなカップルが手を繋いで歩いていた。
楽しそうに歩く彼らを見て羨ましくなった。
いつから私は、こうなってしまったのだろうか。
コロコロと頬を行き来させていた飴を奥歯で噛み砕いた。


「イライラしたときの癖」


教室のドアの方から声がする。
パッと横を見ると、私を呼び出した彼がドアに手を掛け立っていた。


「俊介」


悪い、待たせた。と彼はこちらに歩み寄ってきて、私の席の1つ前に腰掛けた。俊介から呼び出される事なんて滅多に無いからなんだか緊張する。


「俊介だけ?珍しいね」

「祐は呼び出し」


イライラしているのを誤魔化すように言うと、俊介がさらりと答えた。その一言に胸がちくりと痛む。

ずっと前から分かっている事だ。
女の子に優しくてチャラくてモテモテで沢山告白されて、すぐ彼女も出来て、すぐ別れてまた付き合って...そんな事、ずっと側で見てきて分かっているはずなのに、この胸の痛みには未だに慣れない。


「お前、祐の事...」

「あーあ!諦め悪いよねぇ。折角真似してちょっと大人ぶってチャラくしてみたり、祐呼びやめたりしてんのにさ」


私もずっと1人だったわけではない。
一応告白だってされるし、彼氏もいた事がある。
ただ毎回毎回ここに居ない誰かさんが頭の中に居座り、相手と比べてしまうから、断り続けてきた。


「ほんっと、バカ...」

「アイツ、地味に気にしてるぞ」

「...祐が気にしてるのなんて、壁作ったときから知ってる」


初めて苗字で呼んだときの祐の固まった顔を見て、罪悪感を感じなかったわけではない。でも、あの時はそうするしかなかった。







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