突然名前を呼ばれて固まる。
いつもあだ名で呼んでるくせに、急に名前で呼ぶのやめて欲しい。心臓に悪い。

動揺を見せないように隠し、返事をしつつ先程からしゅしゅと盛り上がっている祐の方を見ると、彼は少し複雑そうな顔をしてこちらを見ていた。


「(あれ...?)」

「あー...由梨がお前と遊びたいって」

「由梨が?」


彼が複雑そうな顔をしている理由が分かった。
最近反抗期らしい、彼の妹。
以前はよく2人で出掛けていたものの、進級してからお互い忙しく出掛ける機会が減っていた。
兄に対する反抗期と最近男が出来たとかで、兄の祐は凹んでいるようで。私と遊びたいと言われて更に複雑な気持ちになったんだろう。

...シスコンなんだから。


「最近遊んでなかったしねぇ。あ、男出来てオネーサンに頼りたいのかな?」

「てめっ、それを!」


少し涙目になった祐の口から先程奪われた飴を奪い取り、口に含む。一回り小さくなったそれと交換するように彼の手に包みの付いたチョコバナナ味の飴を持たせた。


「今日水野くん家行くわ。しゅしゅ、じゃね〜ん」

「おう」


校内がざわつき始めたし、シスコンお兄ちゃんが五月蝿くなる前に2人に手を振ってその場から立ち去る。
私と彼らは別のクラス。それを良いことに彼らと戯れるのを少し避けていた。ただでさえ幼馴染で敵を作っているのに、常に一緒だと2人のファンから何をされるか分からない。


「...今日も平和でありますよーに」


小さく呟いて教室に入った。





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