ヴィクトル主催で開催することになった"温泉on ICE"。丁度オフを迎えていた私はその本番の数日前にいきなり電話で呼び出された。ヤコフに許可を貰いバタバタで駆けつけ、前日の深夜にリンクで調整し、安心したものの、イベント直前にまた面倒な出来事があり...と色々トラブルはあったが無事に成功。
シークレットゲスト(サプライズゲスト?)であった私の出番が一番最初になったが、ヴィクトルはそれもしっかりと予想していたようで最後に一緒に滑りながら「流石は俺の女神」と褒められた。ムカついたのでその後一発腹にお見舞いしてやった。
その後、成功のお祝いと打ち上げをして騒いでいる大人組を横目に久々の日本食を楽しんでいると隣に誰かが座る気配がした。顔を上げると年下のリンクメイトがジュースのグラスを持って座っていた。
「...いいの?向こうにいなくて」
「うるせーから逃げてきたんだよ」
「ですよねー」
勇利のお母さんが出してくれたきんぴらごぼうを口に入れて咀嚼する。甘めに味付けされていて母の味を思い出す。日本語で"おいしー"と呟くとユーリが変な顔をして私を見た。
「お前が日本語喋ってると変な感じするな」
「見た目がこれだし、普段は話さないもんね」
ここに来る時タクシーの運転手さんにも驚かれたよ、そう言って笑う。
「...レイラ、明日帰んの?」
「ううん、ゆっくり観光でもしようかなって」
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