『続いては最終滑走レイラ・ヴォリスカヤ。ロシア大会では珍しく緊張している様子でしたが、今回はファイナルに相応しく表情に女王らしさが滲み出ています』


「リー、しっかりな」

「はい」

ヤコフに声を掛けられてリングサイドの壁に手をつく。いつも通りの声掛け、周りからの声援、遠くの方で音を聴きながら集中するために下を向く。目を瞑って更に音が遠くなるのを感じながら1人の世界に入ろうとする。と、"レイラ!"心地良い声が私の名を呼んだ。

顔を上げて観客席の、名前を呼ばれた方を見る。リンクメイトや競技を終えた選手たちが目に入った。その中で一際目立つ私の兄弟子と弟弟子。優しい笑みを浮かべて私を見つめている生きる伝説、その隣で前の席に足を乗せて私を見下ろすフードを被った美しい少年。

「ダバーイ!」

ユーリと目が合ったと思ったら大きな声で応援された。ヴィクトルよりも早く声を上げるなんて、珍しい。嬉しくなって思わず笑ってしまう。続けてヴィクトルや勇利達も声を掛けてきたもんだから、グッと親指を立ててリングサイドを離れてスタート位置に向かった。


「...さっきのレイラ可愛かった」

「あ?惚れんなよカツ丼。...つか、反応するの珍しいな」

「それでも、いつもより集中しているみたいだね」

私が離れた後にユーリ達がこんな会話していたことは、私を除いた選手達以外誰も知らない。






ーーーーーーーーーー...





「まぁたアンタに勝てなかった〜」

「ロシア大会あんなだったからチャンスかもって思ったのになぁ」

銀と銅のメダルを首から下げて悔しそうに溢す親友達。苦笑しつつお疲れ様と抱き合えば、自然と出てくるのは笑みで、ジャージ越しに彼女達の暖かい優しい温もりが伝わってくる。

「...同じくらい心配した」

巻き付いているサーラの腕に力が入った。
"私も"後ろから抱きついて来るミラ。
2人とも小さな、本当に小さな声で大丈夫?と聞いてくるもんだから言葉に詰まる。ミラは一緒に居たけれどあのときの話はしないようにしてくれていたし、サーラだってロシア大会後、気を遣っていつも通りに接してくれた。聞かないでいてくれる親友に今まで張っていたものがプツンと切れて涙で現れた。


「えぇっ!?レイラが人前で泣いてる!?」

「あーよしよし!泣いても可愛いとかふざけてるわ。前世天使なの?」



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