リンクでの練習前。
自主練でもしようと思い少し早めに準備運動としてランニングと筋トレをした後、部屋で柔軟をしていると何処からか視線を感じた。上体を前に倒しながら何処だ、誰だ?と目を動かすと目の前に見慣れたシューズが現れる。
「ユーリ」
顔を上げると2歳歳下のリンクメイトがジャージ姿で私の目の前に立っていた。彼は私と目が合うとそのまま向き合うようにその場に座り込む。どうやら彼もこの場所で柔軟をするようだ。
「今日早いね?」
いつもはヴィクトルや勇利と一緒にトレーニングしているのに。それに私と向き合って柔軟をするのも珍しい。何か話でもあるのだろうか?話しかけたが反応は無い。
暫くお互い無言で柔軟をしていたが、どこからかバイブ音が鳴るとユーリはすかさず自身のスマホをポケットから取り出して画面をタップし始めた。そして嬉しそうに顔を緩める。
「(何だ?)」
上半身を地面にくっつけてそのままの体勢で見つめているとスマホから目を離した彼と目が合った。少し照れたように直ぐに目を逸らした彼はスマホをポケットに突っ込み、立ち上がる。
「...なぁ」
「うん?」
「お前、イベント出るだろ」
「?うん」
彼が言っているイベントとは、きっと今度行われるアイスショーの事だろう。大会で滑ったフリーを披露する予定で体の状態と振りの確認をしつつ、皆で踊る振りも覚えてショーに向けて調整をしている最中だ。
というかこのリンクにいるGPに出たメンツは出場予定だからユーリも同じ筈なのだが。
「俺、サプライズでペア考えてんだ」
「ペア?」
「そう。お前、一緒に滑んねぇ?」
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